第24話 賊はすでに分かってる
毎日行われる私塾も、事件直後とのこともあり中止になることを侍女が知らせにくる。
「
申し訳なさげな言葉を発するも目は虚ろだ。
「あたしも知らせを聞いて、バタバタしてたから全然寝れてないの」
「じゃあ、お休みして起きたら昨夜何が起こったのか? 教えてあげる。たぶん賊が何者かも伝 えられると思うわ」
「
「まぁ、
穏やかな幼さを覗かせる寝顔を見ていると、
小さく柔らかそうな口元から、深い
しばらくはそんな無防備な寝顔に目を遣っていたが、次第に
やがて
― 嫌な悪夢だ ―
それは記憶にはない出来事ではあるハズなのだが、実際に起こっているように細部までリアルに再現される。まるで過去の映像のようだ。
穏やかに過ごしていた屋敷に、武装した集団が不意に襲い掛かってくる。
家人も必死に応戦するが、武装した集団に次々と斬り捨てられる。
親しかった面立ちの者が男女問わずに、まるで糸を切られたマリオネットのように崩れ落ちる。
わたしは敵の腕に抱え上げられ、ひんやりと凍った氷のようなものを頬に当てられる。
やがて屋敷の家人は武器を手から放ち、武装した集団に次から次へと縄を打たれて転がされる。
やがて、その光景は単なる略奪行為にへと移る。
豪奢な絹の衣が
どこからか野太い声がお目当ての戦利品を見付けたと、
「あったぞ! こんなところに隠していやがった。こ、これこそが帝位を約する『
「次はこいつらをどうするかだな。まだ
「これで我が主君こそ、新しき皇帝に即位されるのだ」
やがて野太い声は、意味のないくぐもった暗い音へと変わり埋没する。
「
隣からの愛らしい
寝台の上に膝立ちして、
「う、うん。おはよう」
「まぁもう、おはようって時間でもないんだけどね。
陽射しは窓を通して、真南から差し込んでいる。
明るい日差しが、少女の心配そうな横顔の輪郭を柔らかく映し出す。
「ううん、ありがとう。たまに同じ夢を見るのよ。きっと昨晩の事件が引き金になったのかも知れないわ」
そう言うと、梟(シャオ)が纏う
― さすがに、このまま身支度って訳にはいかないわね ―
空腹に温かな湯気を立てる料理に、食欲がそそられる。
― 昨夜、あんな惨劇を目にしたばかりだというのにお腹は空くのね ―
二人は普段より多めの食事をブランチとして摂る。
ひと心地付くと二人で応接間に移動して、昨夜の出来事を順序良く伝える。
紅紅(フォンフォン)も
「あの叫び声に向かって、暗闇に向かって
「それって!」
「賊の姿は見てないんだけど、十中八九で
「偽装? って、そんなの
「まずは整理してみましょう。今回の賊は一人だったのか? 複数だったのか?」
「この大きな屋敷に潜入するなら、大人数だと思うわ。一人でなんて絶対に無理じゃない」
「そうね。この警備の厳重な屋敷を襲うのなら、事前に計画を立てて時機を見計らって組織的に動くでしょうね」
「ん? どう言うことなの」
「つまり、
「でもでも、だからこそあんな
「わたしが気になったのは、昨夜は一度も
指をあっちこっち指し示しながら、再び考え始めてしまう。
「
「そっか!
「そうね、
「それって、まだ屋敷内に
「そうね。それに賊はすでに分かってるわ」
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