金稼ぎ

金はあらゆる幸せの根源であると親が教えてくれた。私は資産を増やそうと思った。

中学から金になる技術のみを勉強した。ついでに転売ビジネスをやった。資産が増えた。

高校は懐柔した後輩や同級生を指揮してビジネスを拡大し、私は勉強の時間を増やせるようになり、また人手が増えて利益も上がった。資産が増えた。

大学は経営学を専攻した。転売よりも利益のある株とベンチャーの起業をやった。資産が増えた。

卒業すると、そこそこの規模になった事業を全て売り払った。起業した時の仲間が反対して離反した。投資ビジネスに力を入れるようになった。株と仲買をやった。原資が多いほど利益も大きくなるようだった。失敗も多かったが、結果的に資産は増えた。

30代くらいになると、親が「子供を持つと幸せになる」と言ってきた。養育費がかかるから、精子バンクに提供をしたと言ったら変な顔をしていた。

50代で親は死んだ。親はそれほど顔の広い人間でもなかったから、香典で利益は出ないだろうと思って可能な限り安く葬式を済ませた。兄弟に事後報告をしたら、なぜ早く言わなかったと言われて殴られた。賠償を取った。資産が増えた。

80代になってもうそろそろ損益分岐点がマイナスに振れそうだったので辞職した。金は増えた。幸せではなかったと思う。