第7話「初犯」

「あるえぇ? ここが学園であってるのかしら?」


 幸隆の大量の荷物にヴァイハード学園のある「デイブッヒ帝国」の通りすがりの人々は奇妙な者を見る目で見ている。


(大きすぎる)


 幸隆以外でもそう思いそうな門が幸隆の行く道を塞いでいる。


「学園の建物すら見えないわ……」


 幸隆は、学園に着いたらミルスに渡された魔法陣の描かれた紙に魔力を流すように言われていたので、紙をカバンから取り出し、流してみる。


 紙が結晶化する。


「え?」


 周りから変な声が聞こえたかと思えば、幸隆を起点にどんどん倒れていく人が続出する。


「何事?」


――――数分後


(紙に魔力流しても何も起きないし、何なんだか)


「そこで、何をしている!!」


 声の方向を見れば、国直属のギルドのマークが胸に描かれている人達が数十人武装をして現れた。


「えーっと……」

「高純度のマナ結晶を持っているということはこの国で何をするつもりだ!」

「あのー……」


 一歩踏み出す。


「構わん、皆詠唱!応援部隊の応援を待っていれば、あのマナ結晶でもっと民間人に被害が出かねない!」


 幸隆に向かって火・風の混合の魔法が放たれると、幸隆はマナ結晶を捨て、回避し門の上を飛び越えた。


 結界に阻まれながらなんとか着地したが、身体が秋の涼しさをモロに感じる。

 幸隆は自分を見た。

 服は下から胸辺りまで、ズボンは既に無い、結界の摩擦で燃えたようだ。


「これじゃ、変質者じゃない。それに紹介状外だわ。詰んだ……」


「どこから入った!侵入者め!」


 背後から女性の怒声が聞こえた。


「いかにも、といいだいところですが、違うのよ」


 幸隆は壊れかけの眼鏡を直しながら振り向く。


「悪いことをしたやつは、皆そう言うわ、観念しなさい!」


 眼の前の女性は紅い腰まである髪に紺碧の瞳、黒いスーツのような物を身につけていて、手にはレイピアを持ち、剣先は幸隆へと向けられていた。


(美人だけど、20代後半かな?残念賞、スカートにしましょうよ、スカートなら残念賞回避出来たのに、でもまぁ、ヒロイン候補としてはお歳を召されすぎているわね。南無南無)


「あらら、既に臨戦態勢ですか、私はただの一般市民ですよ?」

「抵抗しないで、動いたら斬るわよ。大人しく立膝になって、手は頭の後ろに組なさい」


(成り行きに身を任せる方がいいかしら?)


 幸隆は大人しく従う。


女性は腰に身に着けているトランシバーを使い、ギルドに連絡したようだ。


 ギルドに連絡したって、逃げた意味ないじゃない……。


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