この作品は「カイスト」シリーズ(超人の域に達した戦士や魔術士たちが活躍するシリーズ)に属するが、これ単体でも十分理解できる内容である。むしろ、シリーズ未読者向けの内容を意識していると思われるので、ここからカイストワールドに入るのもおすすめである。
とにかく無駄がない。文体は極めて簡潔で、世界観の説明も最低限、主人公ルナクスの描写も素っ気ない。このスタイルは作品を読みやすくすると同時に、ルナクスの強さを表現するにも最適なのだろう。
そう、作品のみならず、その主人公も無駄がない、そして容赦もない。中途半端な強さと動機で彼に突っかかる敵は、コロコロ死ぬ。サクサク滅殺される。その圧倒的虐殺──もとい、正当防衛ぶりを楽しむも良し、命の価値について哲学的な思索にふけるも良し。無駄がない作風だからこそ、どちらの読み方も可能である。
だが、私が何より感慨深いのは、そんな人外ルナクスにも友人や弟子がいるという事実だ。彼らとの交流は──ルナクスにとっても作品にとっても、決して無駄ではないのだろう。
本作は転生を繰り返して高みを目指す魔人「カイスト」のいる世界が舞台となります。著者のシリーズものなんですが、本作から読んでも大丈夫な構成になっています。
今作では「セントラル山の狩人」ルナクスというカイストに焦点を当てられています。
まるで機械かのような、感情を込めない「セントラル山の狩人」の無慈悲さ・恐ろしさ、約束事は絶対に守るというカイストらしい矜持の示し方、そしてなぜこのルナクスが「セントラル山の狩人」をしているのか……非常に先行きが気になりました。
またカイストの中でも神の領域と言われる、Aクラスが絡んできます。武術を極めた者同士の激戦をぜひ堪能してください。
重厚なダークファンタジーが好きな人、濃い戦闘描写が好きな人には大変オススメできる一作です。