第7話 祈りと反逆 ― 二つの光、舞う夜
第一幕「ハレルヤ☆ミライライン」
照明が落ちた瞬間、観客のざわめきが止む。ハロウィンナイトフェスティバル、後半戦。
月を思わせる柔らかなライトが、ゆっくりとステージを照らし出す。観客の視線が集まる先、白と朱の巫女服をアレンジした衣装で陽菜が現れる。伝統的な白衣に、クリスタルを思わせるビジュー装飾。袖口や裾には三女神を象徴する三色(青・赤・金)のリボン、胸元には小さな勾玉のペンダント。髪はゆるやかな夜風に揺れ、サクラの花飾りがライトに照らされる。
彼女の一歩が、まるで祭壇に進むような荘厳さと、アイドルらしい華やかさを両立させていた。
息を吸い込むたびに、胸の奥で三女神の声が微かに響く。「陽菜、光を恐れるな。祈りは“届く”ためにある」
陽菜はマイクを握り、目を閉じた。ステージに吹く風が、彼女の髪を優しく揺らす。
音が流れ出す――
「ハレルヤ☆ミライライン」
Aメロ放課後の空に 願いごと落とした少し泣きそうな夕陽の色誰かの真似じゃ届かない自分だけの風を探してた
Bメロ手を合わせるたびに 胸の奥の音がキラキラってリズムで 未来を呼んでるねえ神様、聞こえてますか?小さな声でも ちゃんと響きたい
サビハレルヤ☆ミライライン!迷っても、走り出すんだひとすじの光、信じて涙のあとに笑顔を咲かせよう
ハレルヤ☆ミライライン!この歌が翼になるまだ知らない明日を描こう心のままに進めばいい
Aメロ2誰かのために祈ることがこんなにも強くなれるなんて傷つく日も、ひとりの夜も言霊(ことば)を信じて歩いた
Bメロ2見えない道でも、怖くないだって夢は、遠くの星じゃないこの瞬間(とき)を生きることがきっと祈りのカタチだから
サビハレルヤ☆ミライライン!この声を、空に放て迷いも希望も、抱きしめて全部、わたしの道しるべ
Cメロ(祝詞)かむながら 光あれ願いよ 風を越えてミライはまだ白い画用紙わたしの色で染めてゆく
ラストサビハレルヤ☆ミライライン!終わらない夢の途中で君と出会い、歌になった祈りが今、未来(あす)を照らす
歌い終えた陽菜の瞳には、新しい光が宿っている。彼女は小さく手を合わせて一礼し、巫女として、そして“時代を照らす新しいアイドル”として、静かにステージを降りた。
第二幕 BLACK WING IDOL ― 夜魅、舞台に降り立つ
暗転した会場に、鋭いエレキギターのアルペジオが走る。サーチライトが交錯し、ステージ中央に一際輝くシルエット。
夜魅――黒いレザーを基調に、スカートには透けるチュールと羽のような装飾。髪はポニーテール、サイドに紫のエクステ。左手にはシルバーのバングル、右耳に小さなクロスのイヤーカフ。その立ち姿は、ただ可憐なだけではなく、どこか鋭利で、誰も近寄らせない“孤高の美”があった。
マイクを握る手は迷いがなく、観客を真っすぐに射抜くような眼差し。背後には、ガールズバンドのメンバーたち――ギター、ベース、ドラムがそれぞれ個性を放つも、やはり“このステージの主役は夜魅”だと誰もが感じる。イントロのリフで観客が湧き、夜魅は軽やかにマイクスタンドを回す。「…やっと来たね、主役の時間。」観客が一気にヒートアップする中、バンドが息を合わせて“Black Wing Parade”がスタート。
「Black Wing Parade」
Verse 1
閉じたままじゃ始まらない痛みも今、ドレスコード黒いリボンほどいて――闇さえ味方に変えてくの
Pre-Chorus
群れない翼は、ひとりでも飛べる傷のひとつで 強くなれた
Chorus
Fly high! Black wing parade!堕天のフリして 笑ってやるの眩しさよりも リアルを選ぶ涙の跡も メイクに変えて
Black wing parade!この夜を照らすのは 私たち自身祈りじゃなく 叫びでいい今、風を起こせ――Rebel soul!
Verse 2
綺麗ごとだけじゃ救えない夢の裏に爪を立てて光を奪うくらいなら自分で作る、眩しさを
Pre-Chorus
偽りのステージ 飽きたの痛みもリズムになるのなら
Chorus
Fly high! Black wing parade!羽ばたく度に 夜が歌い出す鎖を切って 心を晒せ孤独の中で 咲く花がある
Black wing parade!翼の影で 誓うのFreedom祈りじゃなく 闘いでいいさあ、光を塗り替えろ――Rebel soul!
Bridge
涙と夢の境界線で「綺麗」より「本気」を選んだ誰かのルールじゃ 止まれないこの声は、夜の祈り
Last Chorus
Fly high! Black wing parade!堕天のフリして 笑ってやるの闇の中こそ 光が生まれる私は私を 壊して生きる
Black wing parade!この夜を照らすのは 私たち自身祈りじゃなく 叫びでいい今、風を起こせ――Rebel soul!
観客は夜魅の手振りに合わせて腕を振り、曲のラストで彼女がマイクを高く掲げると、バンド全員でキメポーズ!観客の歓声が頂点に達する。
曲が終わったあとも、夜魅は少し息を切らしながらも、観客一人ひとりを見つめて「ありがとう!」と叫ぶ。バンドメンバーとハイタッチ、会場の空気を愛おしそうに味わう姿――これぞライブのカリスマ。
陽菜は袖で、その一体感と熱量に圧倒されていた。
(……夜魅さんのステージには“魔法”がある。みんな、彼女と同じ世界に連れていかれてる――)
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