記憶


 雪の降る日に私は生まれた。とても寒い日で、天から雪と共に降ってきてくれたようだったとお父様は仰っていらした。

 3歳の冬、やっぱり雪の降る日にお母様が肺炎で亡くなった。私は雪が憎らしく思えた。雪がお母様の命を奪ったのだと、何故かそんな風に思い冬を、いや雪を嫌った。

 それから雪を見るとお母様のことを思い出して辛くなった。だから冬は家に閉じこもり、学校へも行かなかった。

 そんな私を見かねてお父様は言いました。


「ネーヴェ、雪を嫌ってはいけないよ。君が生まれたのは雪の降る日で、お母様は君の誕生を大層喜んだ。なのに君がそんな暗い顔をしていたら、天国のお母様が悲しんでしまう」


 お父様は私の手を取り、雪の世界へと連れ出して下さいました。


「さぁ、お父様と一緒に遊ぼう。遊んで笑顔でいたら、天国のお母様はきっと喜んでくれるよ」


 お父様と一緒に雪うさぎや雪だるまを作ったり、雪玉を投げ合ったりした。ふたりでソリに乗り、雪の上を滑ったりもした。それはとても楽しくて、私は自然と笑っていた。

 研究でいつも忙しいお父様が遊んでくれる、私はすっかりと雪が好きになってしまった。

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