ステレオタイプな「悪役」「無能」「完全無欠の天才」といった貴族像をすべて回避し、極めて人間味あふれる一人の貴族の「日記」という形式で、壮大な反逆劇の裏側を描き切った異色作だ。
主人公は、国を相手に反旗を翻すという重大な決意を固めた貴族だが、彼の日常は常に完璧ではない。彼は「概ね善良」であるため、無益な血は流したくないと悩み、「それなりに有能」であるため、策は練るものの、時に計算外の事態に直面して頭を抱える。この絶妙なバランスこそが、本作最大の魅力である。
日記という形式で見事に昇華させた傑作です。歴史の表舞台ではなく、その裏側で奮闘する一人の貴族の私的な記録は、読者に寄り添い、共に息をのませ、そして最後には心から彼の成功を願わせる。
ライトノベル、ファンタジー、政治劇、そして人間ドラマが好きなすべての人に強くお薦めしたい一冊です。