魔王系少女

ぷりっつまん。

0-1 日記

「はぁ……疲れた……」


一仕事終えた私は、ひとまず住み慣れた自分の館に戻ってきた。

いつも安眠を約束してくれるベッドに横になるが、先ほど人生で最大の転換を迎えたからか、もうとっくに寝る時間は過ぎているのに、頭が冴えて眠気がまったくない。

それでも休もうとしばらく横になってみたが、眠れる気配はない。

本でも読むかと思って起き上がり本棚に目をやると、日記に目が留まった。


(そういえば、何か特別なことがあった日は日記をつけるようにしていたっけ……)


今日はまさに、人生を一変させるほど特別なことがあったから、久しぶりに日記をつけようと思い、本棚から日記を取り出してページを開く。

最後に書いたのは五年前だった。

いくら魔族の寿命が長いといっても、五年間日記をつける出来事がないというのはちょっとどうかと思う。

それに今年は激動の一年だったから、今日以外にも日記を書く機会はあったはずだ。

その前はどうだったかが気になってページをめくると、十二年前の日記が現れた。

前に何かあった時からさらに七年も前なのか。その前は二十五年前で、ドアノブが外れて使い物にならなくなったことが書いてある。これ、特別なことなのかな。


でも明日から違う。

毎日のように特別なことが起こって、毎日のように頭を悩ませて、毎日いろいろな場所に出向いて、きっと魔界で一番忙しい魔族になると思う。

そうなったら日記は一気に埋まる……かもしれない。

いや、特別なことに慣れてしまって、結局書かない気がする。


(私に日記は向いていないってことね)


続かないならもういいか。そう思い、私は日記を放り投げてベッドに横になる。

次にこの日記を開くのは何年後になるのか。もしかしたら開くことなく命を終えるかもしれない。その時、近しい誰かがこれを見たらどんな顔をするのだろう。

そんなことを考えながら、私はこの激動の一年を静かに思い返す…… 。

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