第34話 敵の策謀 ― 闇に潜む影

 渓谷の橋を修繕し終えたその夜。

 僕たちは野営地に戻り、ほっと息をついていた。

 兵士たちは焚き火を囲み、笑顔で戦勝を語り合っている。


「リオン殿、よくぞやり遂げました!」

 兵士長が頭を下げる。

「この橋が戻ったことで、補給路は再び繋がりました。王都は救われます!」


 僕は苦笑して首を振った。

「僕一人の力じゃありません。ルシアさんやセリーヌさん、みんなが守ってくれたから……」


 安堵の空気が広がる。

 ――だが、その裏では。


 ◇ ◇ ◇


 敵国アルヴェリア。黒鉄の城砦。


 仮面の女魔導師は、暗い大広間で冷たい声を響かせていた。

「……やはり修繕士は厄介だ。橋を直されれば、我らの策は台無しだ」


 膝をつく部下たちが怯えながら答える。

「も、申し訳ございません……奴の力は想定以上で……」


 女魔導師はゆっくりと杖を床に突いた。

 カンッ、と乾いた音が響き、部下たちの背筋が凍りつく。


「責めはしない。だが次は失敗を許さぬ。修繕士を討つための“器”を用意するのだ」


「……“器”、でございますか?」

 一人の将軍が恐る恐る尋ねる。


「そうだ。彼の力を上回るには、彼と同じ――“修繕”を模倣する力を持つ存在が必要だ」


 仮面の下の口元が、不気味に笑みに歪んだ。

「人造の修繕士を作り出す。奪った命と器を繋ぎ合わせ、我らの忠実な兵としてな」


 その言葉に、広間の空気が凍りついた。


 ◇ ◇ ◇


 一方その頃。

 野営地の焚き火の前で、ルシアが剣を磨きながら僕に尋ねた。


「リオン殿、これからも敵はあなたを狙い続けるでしょう。……恐ろしくはないのですか?」


 僕はしばし考え、正直に答えた。

「怖いです。でも、守りたいものがあるから、立ち止まれません」


 その言葉に、ルシアの瞳が揺れた。

「……私も同じです。あなたが立ち止まらぬなら、私はその背を守り続けます」


 焚き火の炎が、彼女の横顔を照らしていた。


 そのとき、セリーヌが巻物を手に近づいてきた。

「リオン、王都から新たな報せです」


 差し出された巻物には、震えるような文字が記されていた。


『敵国アルヴェリア、禁忌の術により“不明の兵”を製造しているとの情報あり』


 僕は息を呑んだ。

「……まさか、敵も修繕の力を……?」


 胸の奥に、不気味な予感が広がっていった。

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