第6話 決断!リオンの選ぶ道

 翌朝。

 村の広場に、再び王都の使者ロイと村人たちが集まった。

 みんなの視線が、ひとり僕に集まっている。


「リオン殿」

 村長が一歩前に出る。

「答えを聞かせてくれぬか。この村に残るか、王都へ行くか」


 村人たちは不安げに顔を見合わせる。

 子どもが母親の手を握り、老婆が震える声で「行かないで」と呟くのが耳に入った。


 僕は深呼吸し、胸の奥を確かめる。


「……僕は、この村に残ります」


 静かに、けれどはっきりと告げた。


「えっ!?」

 驚きの声が広場に響く。


 ロイの眉がぴくりと動いた。

「理由を聞こう」


「僕は……勇者パーティにいた時、自分の居場所がなかった。

 でもこの村では、必要としてくれる人がいる。農具を直せばみんなが喜び、灯りを直せば夜が明るくなる。

 その笑顔を守りたいんです」


 言葉を吐き出すたび、胸が軽くなる。

 僕が本当に望んでいたのは、戦場の華やかな栄光じゃなく、人の暮らしを支える日々だった。


 沈黙のあと、村人たちから歓声が上がった。

「やった! リオンさんが残ってくれる!」

「これで安心だ!」

「ありがとう……本当にありがとう!」


 涙ぐむ者までいる。

 その光景に、胸がじんわりと熱くなった。


「なるほど」

 ロイは静かに言った。

「己の意志を持ち、居場所を選んだか。それもまた一つの強さだ」


 そう言って背を向けたかと思えば――

「だが、王都は諦めん。いつか再び迎えに来る。その時は……覚悟しておけ」


 馬に跨り、騎士たちを引き連れて去っていくロイの背中は、やけに大きく見えた。


 村に安堵の空気が広がる。

 子どもたちが笑顔で駆け寄ってきて、僕の手を取った。


「リオンさん、これからも一緒だね!」

「ああ、もちろんだ」


 そう答えた瞬間、心の奥に強い決意が芽生えていた。

 たとえ王都に呼ばれようと、戦争に巻き込まれようと――。

 僕はこの村を守り抜く。


 追放されて始まった物語は、ようやく「僕自身の選んだ物語」へと変わったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る