第4話 王都からの使者
魔物襲撃から数日後。
村は以前よりも活気に満ちていた。
修繕した農具のおかげで畑はどんどん耕され、壊れていた水車も復活し、川の水を利用した新しい畑が広がっている。
子どもたちは修繕したおもちゃで遊び、夜は明るいランプの光のもとで歌や踊りが絶えなかった。
「リオンさんが来てから、村が別の場所みたいになったよ」
老婆がしみじみと言う。
僕は頭をかき、苦笑いを浮かべるしかなかった。
(ただ直しているだけなのに……なんだかすごいことになってるな)
穏やかな時間が続く――そう思っていた、その矢先だった。
ある昼下がり。
村の門に、一団の騎士が姿を現した。
「……あれは、王都の紋章?」
村人たちがざわめく。
白銀の鎧をまとった騎士たちが馬を駆り、先頭には緋色のマントを羽織った青年がいた。
端正な顔立ちに冷たい瞳。どう見てもただの巡回兵ではない。
「村長殿、そして村の者たち。王都から参った」
青年は馬から降り、澄んだ声で告げた。
「我が名はロイ・ハーヴィス。王国直属の使者である」
村人たちが息を呑み、緊張が走る。
王都の人間など、辺境に来ること自体が珍しい。
「この村で“奇跡の修繕士”が現れたと聞き、調査に来た」
ロイの視線が、まっすぐ僕に突き刺さる。
「お前がリオンか?」
「は、はい……そうですが」
ごくりと唾を飲み込む。
なぜ王都が僕のことを?
魔物襲撃で戦ったことが、どこかに伝わったのだろうか。
ロイはゆっくりと歩み寄り、僕の目の前で立ち止まった。
その気迫に、村人たちが息を詰める。
「王都に戻ってこい。お前の力は、国のために使われるべきだ」
村人たちがざわめいた。
「そ、そんな……リオンさんを連れて行くなんて!」
「この村に必要なのはリオンさんだ!」
僕は慌てて手を振る。
「ちょっと待ってください! 僕はただ、壊れた物を直しているだけで――」
「直すだけ、だと?」
ロイの瞳が鋭く光る。
「ならばこの剣を直してみろ」
差し出されたのは、真っ二つに折れた王国騎士の剣。
古びた紋章が刻まれているが、長年の戦いで完全に砕けていた。
「王都の鍛冶師ですら直せなかった代物だ。できるものならやってみせろ」
僕は剣を受け取り、深呼吸する。
(できるだろうか……でも、やるしかない)
「……〈修繕〉」
剣が淡い光に包まれる。
折れた破片がぴたりとつながり、刃が美しく輝きを取り戻す。
さらに紋章の部分が淡く光り出し、まるで剣そのものが再び命を宿したかのように。
「なっ……!」
ロイの目が見開かれる。
騎士たちもざわめき、村人たちは歓声を上げた。
「やっぱりリオンさんだ!」
「奇跡の修繕士だ!」
ロイはしばらく剣を見つめ、そして低く呟いた。
「……信じられん。本当に直した、いや、それ以上だ」
やがて彼は真剣な眼差しで僕を見た。
「リオン。お前の力は危険だ。国にとっても、敵国にとっても」
村人たちが不安げに顔を見合わせる。
「だからこそ、王都に来い。国王陛下自らがお前を求めている」
――王都に呼ばれる。
追放された僕が。
ただの〈修繕〉スキルしか持たないと思っていた僕が。
胸が高鳴り、不安と期待が入り混じる。
「……どうする、俺?」
辺境スローライフを続けるか、それとも国のために立つのか。
新たな選択が、僕の前に突きつけられていた。
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