コゲヌ(HO2目線ss)⚠️ネタバレあり⚠️

@mojikaku

鏡矢はおこです

「うるせぇな!別に世話しろとか言ってないだろべつに俺は1人でも平気だ!余計なお世話なんだよ!」

「はぁ!?!?」

蓮のその言葉にいつもなら喧しいほどに回る鏡矢の口がわなわなと震える。

俺がやりたくてやってるんだとか、世話しろって言われたからやってるんじゃないとか、お前も俺の五感が変だって言った時もっと早く言ってれば色々できたのにとか言ってただろとか、色んな言葉が頭に浮かんでは弾けていく。

俺がこいつとこういう風な言葉の交わし方をするのは珍しい、アイツはいつも冷静で、俺の言葉を待ってくれるから。

だが今の蓮にはその余裕はないようだし、そんな蓮に上手く自分の気持ちを話せるとは思えなかった。

時間がいると思った、お互いに冷静になる時間が、なにより自分の頭の中の言葉を整理する時間が。

だから「お互い頭冷やそう」と言って俺は家を出た。

家に入ればどうしても顔を付き合わせることになる、そうすれば頭を冷やすどころではないだろうし、なにより自分は家でじっとするより動き回った方が考えがまとまるから。

あいつに悪気がないことなんて分かってる、というか今回のこと、あいつを責められる所なんてどこにもない。

きっと蓮は、自分の発作で俺のことを縛っているとでも思ってるんだろう。

つい最近まで俺も感じてた感覚だから、気持ちは分かる。

それでも俺は蓮に怒っている。

だってアイツはおれの状態を聞いた時怒ったよな?

なんでもっと早く言わなかったのかって!!

それはつまり「もっと早く言ってればもっと色々できたのに」ってことだろ?実際そう言ってたし。

つまりアイツは俺が頼まなくても俺に世話を焼く気でいたということだろう。

持ちつ持たれつ、人間誰しもそうだろう?まして俺らは親友なんだから、アイツは俺にもっと世話を焼かれてもいいだろう、俺はあの2年間あいつに世話焼かれっぱなしだったんだから。

外を彷徨いながらそんなことをぐるぐると考える。

堂々巡りする思考を止めたのは携帯の呼出音だった。

画面を確認すれば、画面にはアイツの名前があった。

考え事をしてるうちに我慢できなくなって文句でも寄越しに電話かけてきたか!?次は俺も言い返すもんね!と息巻いてとった電話は予想していたのとは全く違う衝撃をもたらした。

「ッ…きょ…グスッ…ぅッ…や…」

蓮の涙なんて見たことがなかった俺はその電話で弾かれたように走り出した。

しばらく歩いたはずが、思考同様堂々巡りしていたらしい俺はさほど家から離れていなかった。

おかげですぐに帰ることが出来た。

家に入りすぐに蓮を探す、幸運にも蓮はリビングで倒れていたのですぐに見つけることができた。

涙目で、というか涙で顔を濡らした蓮は俺の姿を見て嗚咽混じりに何かを言っていたようだが「後で全部聞くから、今は呼吸に集中しろ」と言って黙らせて蓮の背中をさする。

しばらくすれば蓮の呼吸も大分落ち着いてきたようで、俺も安堵から周りを見る余裕が出た。

リビングの机の上、には食器と、それから嗅ぎなれたいい匂いがする。

こいつ……料理してやがったな……!?

しかもひとりで食べてやがる!ずるい!!

じゃなくて、危ないだろ!!!

蓮はあの一件以降時折発作を起こす、それの世話を俺が焼いてたのが今回の喧嘩の原因なのだが……。

まぁ、とにかく、それが理由で俺は蓮に「危ないから一人で料理するなよ」と言っていた。

蓮は不満たっぷりといった様子だったが、一応今までは料理する際には俺に声をかけてくれていた。

どうせ今回は「鏡矢の手を煩わせなくても料理ぐらいできる」とか思って実践したんだろ?

こいつ……ほんとに……

俺にはあれだけ色々言うくせに……??俺の言ったことは守らないんだ……へぇ……ふぅん……?

もう怒った、申し訳なく思う気持ちは分かる?知ったことか。

俺はニッコリ笑って蓮に話しかける。

「蓮くん?話があります」

もうしらん、俺は俺のしたいようにする!どうせ俺が言っても蓮は聞いてくれないんだから!!

俺は俺のために蓮の世話を焼き倒してやる!!

蓮は申し訳なさからか、それとも恐怖か、とにかくぎこちない仕草で俺を見あげて眉をひそめた。

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