第4話『板胸砂漠の闘い』〜The Desert of Flatness〜



 双丘村を後にした勇者パイタロウ一行は、乾いた風の吹きすさぶ荒野へと足を踏み入れた。


 その先に広がるのは――板胸砂漠。


 砂はすべて平らに均され、丘や谷の起伏すら存在しない。「おっぱいの影を許さない」という帝国の思想をそのまま体現した地だ。


「うわぁ~……なんか最悪な雰囲気! こんなにペッタンコな砂漠ってある!? ほんっと胸の夢も希望もないんだからっ!」


 ミルクがぷんすか怒りながらも、隣のパイタロウにぴたりとくっつく。


「パイタロウちゃん♡ アタシ怖いな~♡ ちゃんと守ってね?」


「……任せろ」


 パイタロウは真剣な眼差しで答えるが、腕に押し当てられた巨乳の感触に少し赤面する。


「やれやれ……。相変わらずあの二人はイチャイチャしてるわね」 


 マローネはため息をつきながらも杖を掲げ、周囲を探る。


「魔力の流れが不自然。……何か仕掛けがあるわ」


「フン……砂漠だろうがなんだろうが、俺にとっちゃ影が増えるだけだ」


 チェストは砂を蹴り、薄笑いを浮かべた。


 しかし次の瞬間、地面が突然沈み込む。


「きゃっ!? パイタロウちゃんっ!!」


 ミルクが叫ぶと同時に、砂の下から黒い機械兵が這い出てきた。


 それは「フラット・サンドソルジャー」。

胸の装甲は板のように広がり、両腕は鎌状に変形している。


「おっぱい検知――発見。抹消対象」


 無機質な声とともに光線が放たれる。


「くっ!」


 パイタロウが剣で弾き返す。


「やっぱり出たか……帝国の刺客」


「炎よ! この大地を揺らし、虚無を焼き尽くせ――

 揺れる丘を讃え、谷を守る焔よ!

 《フレイム・ティティ・バースト》!!」 


 マローネの詠唱は長大になり、火柱が砂漠を焦がした。


「おっぱいは命! アタシが絶対守るんだからっ♡ 《ヒーリング・パイパイ・シャイン》!」


 ミルクが光を放ち、仲間の傷を癒やす。


 その巨乳は戦闘のたびにぶるんぶるん揺れ、砂漠の乾いた空気すら湿らせそうだった。


 だが敵はしつこい。砂の下から次々と這い出し、数が増えていく。


「……ちっ。まるで蟻地獄だな」


 チェストは影に消え、背後から一体を斬り裂く。


「“瞬迅穿・影縫斬”」


 刃が閃き、敵の関節が切断される。


「アンタ!! 勝手に前に出ないでよ!」


「お前こそ突っ込みすぎなんだよ!」


「うるさいっ! アタシはパイタロウちゃんのそばで戦いたいの!」


「はぁ? デレデレしすぎだろ……ほんっとにバカデカパイ」


「な、なんですってぇ!? アンタ!! ほんっとに口が悪いんだから!」


 またも戦場でケンカを始める二人。


「……はぁ。学習能力ゼロね」


 マローネは冷たくつぶやき、杖を掲げる。

「雷よ、虚無を貫け――《サンダー・ティティ・レイ》!」


 稲妻が走り、敵をまとめて吹き飛ばす。


 パイタロウも剣を振り下ろし、最後の一体を両断した。


「ふぅ……なんとか押し返したな」


 静寂が戻る。だが三人は荒い息をついていた。


「やっぱり……板胸砂漠、甘くないわね」 


 マローネが呟く。


「アンタがカッコつけるから余計にややこしくなるのよ!」


 ミルクがチェストを睨む。


「フン……俺がいなきゃお前、もう二回はおっぱい潰されてるぜ?」

「うぅ……くっ……! でもアンタの態度はムカつくんだから!」


 二人はまた火花を散らす。


 パイタロウは肩をすくめながら、砂漠の奥を見据えた。


「ここを抜けなければ、帝国の本拠にはたどり着けない。行こう……どんな罠が待っていても」


 こうして勇者パイタロウ一行は、灼熱と平面の絶望が広がる板胸砂漠へと進み始めた。


 その先に待つのはさらなる試練と、仲間たちの胸の絆を試す戦いだった。


NEXT →第5話「砂漠の花の罠」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る