元魔王の近衛騎士団長ですが魔王軍を離れて放浪旅をしたいと思います

ナリゾー

第1話

そこには数多の人間だったものと一人の人間が立ち尽くしている


「あーちくしょうまた壊れやがった…この武器は耐えてくれると思ったんだがな」


彼の持つ武器は一般的なロングソードで柄の部分より上が折れている


「どっかに俺の全力をもってしても壊れねぇくらいの剣が無いものかねぇ」


そういい彼はその場に座り込む


「にしても命を狙われ続けてはや3日?いやそれ以上だな…いい加減諦めてくんねぇかな毎度毎度この量の傀儡の相手だるいんだけど」


彼は1人で悪態を着く


「なら私のところに戻ってくればいいんじゃない?」


その場に中性的な声が響く


「何度言ったらわかるんだ?俺はもうそっちの国に忠を尽くすことは辞めるんだだから諦めてくれ」


「そうかい、なら私を殺しなよそうすれば誰からも手出をされないよ?」


その声の主は楽しそうに言う


「別に殺す殺さないはいいけどさ、いい加減この人間もどき送ってくるのやめてもらえる?」


そういい彼は立ち上がりそこら中に転がっている死体の顔を見る


「いい加減同じ顔は見飽きたしあまりに弱すぎる」


そういい死体を蹴飛ばす


「なんなら今ここで決着をつけてやろか?」


その提案を聞いた声の主は


「それもまた一興存分に死合うか」


空間が歪みそいつは顕現する


「おうおう大層なご登場なこって魔王ジハルディア様」


身長は165cmくらいの女性が現れる


「そっちはそんなに呑気にしていいのか?元魔王軍近衛騎士団団長スレイプニル」


スレイプニルはバツの悪そうな顔で


「ケッそんな名前はもう捨てた俺はもうスレイだ」


そういいながらジハルディアと対峙する


「ほらこれを使うがいい」


彼女から渡されたのはひとつのロングソード


「今更なんのつもりだ?」


「私が望むのは死合いであってなんでもありの戦いじゃない。私は平等主義なのでなだから構えるがいい」


スレイはそのまま渡された剣をみる


(なるほどこれは国宝級の魔剣だな)


「おい魔王こんなもんどっから取ってきやがった?」


「さすがスレイプニル君。君の観察眼は未だに健在のようだね」


「御託はいいからさっさと答えやがれ。あとスレイな」


「そんなに急かさなくとも良いでは無いか、ただそれを鍛造したのは君を慕う鍛冶師アルティアだ」


スレイプニルはその名前を聞き顔を顰める


「おっと、スレイプニル死合いの前にお邪魔が入ったようだ」


スレイプニルはそう言われ気配察知に意識を割く


(約50体くらいのアンデットか)


「あーめんど」


スレイプニルはそうぼやく


「なるほど元々こういう企みだったわけねエルドリッチ」


そういうとどこからともなく王冠を被った髑髏が現れる


「いやはや、これだと最強同士がぶつかり合い消耗したところを叩くという作戦が水の泡というわけか」


「あぁ?テメーの浅はかな企みなんざ俺にかかれば朝飯前よ」


そういうとエルドリッチは高笑いをしだした


「そうですね、最強と名高いスレイプニル様にかかれば私なんだただの塵芥とおなじでしょう。仲間想いのあなたに取っておきのプレゼントがあります」


そういうと2体のアンデットが出てくる


「あなた達は確か近衛騎士団2席と3席のサシャとグレイ」


「あの勤勉なサシャとグレイスかことが収まったらなんか手土産渡そうと思ったのにな」


スレイプニルは残念そうに言う


「ほれスレイプニル様を1番と言っていいほど慕っていた部下だぞ?スレイプニル様はこの元部下を切れますかな?」


「部下を切れるってか?そんなもん答えは最初から決まってら」


そういいスレイプニルはジハルディアから渡された魔剣を下ろす


「さすがのあなたも部下を殺すことはできませんか」


その瞬間サシャとグレイスは首を落とした


「敵は殺すそれが親しい人でもな。人族の書いた小説でもこういうシーンがある度に思っちゃうんだよね。『バカ』だなってそんな在り来りなお涙頂戴されてもよ結局は戦争勝ちか負けしかない」


そういうとエルドリッチは惨めに口が開いていた


「き、貴様いいのか!?」


「んぁ?だってこいつら死なねぇよ?」


「何を言っている!こいつらはもう事切れ…」


そういうと2つの死体が起き上がった


「こんなんで死ぬとお思いで?」


「我は死なん、主がいる限り」


そういうふたりの頭にチョップをする


「カッコつけてんのはわかるけどよ?いい加減遊ぶのはやめなさいって何度も言ってるでしょうが!」


ふたりは頭を抑えながら文句を垂れる


「いきなり辞めるって言うからさぁ〜仕方ないじゃん…」


「うむ、我の主人はスレイしかおらぬ故」


「そう言われると怒れねぇよ」


「貴様どうして生きておる!」


恐れと怒りを混ぜたような声を響かせる


「知らねぇのか?魔王国のマッドサイエンティストが作り出した死んでも実用的とは言えないが完成したらほぼ死なない人と人の魂を繋げるの事」


「まさか貴様が唯一の成功例なのか…!?」


「まぁそゆことだな、あれは辛かったぜ俺の魂をいいように弄り回されてさ」


「それでも片方を殺したらもう片方も死ぬはずだ!」


スレイプニルは嗤う


「まさか俺の権能を知らねぇのか?おい魔王こいつの教育間違ってんじゃねぇの?」


「そこで私に話を振るのかねまぁ腐っても魔王軍を率いる長ならば知っててもおかしくはないはずだ。おそらくそいつの職務怠慢だ」


やれやれと言った感じに嘆くジハルディア


「言っておくが元魔王軍近衛騎士団団長スレイプニル権能は運命操作ルシフェルこの世の全ての事象の行き着く運命をねじ曲げ真実として書き換えることだそれが例えだとしてもな」


そういうとエルドリッチの顔色が青くなっていく


「ば、馬鹿なそんな権能が存在していいわけが無い…」


「そう存在してはならない権能はこの世に数人いるわ超越者と呼ばれる者たちねそんなことも知らないの?無能な塵屑エルドリッチ


冷たい言葉を言い放つジハルディアは魔王たる威厳を放つ


「塵は掃除しないとね」


底冷えするような笑顔とともに魔力を迸らせる


「魔王様どうかご慈悲を!」


「叛逆罪だ死を受け入れよ」


そんな命乞いを無慈悲に魔法を打ち込むジハルディア


その場にいたはずのエルドリッチは消滅していた


「悲鳴をあげる間もなく殺すってまだ手は鈍ってないみたいだな」


「まぁね、この職に就いてからは事務仕事ばっかりでつまらんがそこで修練を怠る私では無い」


「ってかお前いつまでそのザ・魔王様ムーブかましてんの?」


ちなみにスレイプニルとジハルディアは家が隣という幼馴染なのだ


「私はもう魔王だからな昔みたいなヤンチャな私では無いのだよ」


そういいドヤ顔のまま胸を張る


「へぇ〜ちなみに夜な夜な『魔王ムーブ疲れるよ〜』って嘆いてるって噂聞いたけど?」


そういうと茹でダコのように顔が赤くなっていく


「ちょっ、それ誰に聞いたのよ!」


「メイド長がたまたま耳に入れたとか何とか」


「あのクソエルフ!毎回毎回いらないところを聞きおってからに!」


昔からジハルディアは怒ると作っていたキャラさえも忘れて素の口調になるのだ


「ところで死合いはどうすんの?」


「そんなもんお預けよ!今はそれよりシトリアにお灸を据えないと…」


「んじゃ俺は適当に世界放浪してっからなんか用事あったら会いに来てくれや」


これはダークファンタジーに見せかけたただの最強の騎士と仲間たちのお気楽珍道中である



「スレイ!覚えときなさいよ!」


「あーあ団長行っちゃった…」


「我が主…」


「「「とりあえず仕事は他に任せておうか」」」


スレイと一緒に過ごしたい人達の心境は合致した


とりあえず退屈な生活にはならなそうだ

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元魔王の近衛騎士団長ですが魔王軍を離れて放浪旅をしたいと思います ナリゾー @kamui0327

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