悲しくないのは……なぜ?
十夢
悲しくないのは……なぜ?
秋晴れの日常、突然の訃報が届く
僕たちは同級生だった……「人生50年」どこかの武将が遺した言葉
その言葉にも満たない生涯だった……
訃報を聴くやクラスのグループLINEには悲しみが溢れた……亡くなった友人の人柄に触れて全体が悲しみに包まれて行く……
そんな時、自分は、一人笑った! 顔は笑顔
それは、亡くなった友人のトレードマークだったから 彼の代わりに僕が笑おう! 悲しくなって笑えなくなった友達の分も、僕が笑って気分を上げる……
きっと、そんな僕を見て、友人たちは言うだろう?
「悲しくは……ないの?」
僕は答える……
「死生観が違ってしまったから……亡くなった友達は、体を脱いだだけなんだ。彼には僕たちのすべてが見えるようになった……そう思うだけ。これまでは、彼も空間に支配されてたから……僕と君の間に空間を見つけては、君と僕を別々に捉えてた。だけど、体を脱いだいまは、もう違うんだ。どこに居ても一緒……吸い込む空気を別々だと思うかい? それと同じ……。空間に頼らなくて良くなった彼は、いつでも、どこでも、僕たちを見ることも、聴くことも、触れることも出来てる。だから、僕は、ここからは、彼とずっと一緒に生きて行くんだって想う……彼が、僕をずっと見てくれている。考えることも思うことも、感じたことも想像したことも何もかも……。
空間が無くなるってそういうこと……。僕の中に、彼の中に、隔ては亡くなった。だから、僕は、悲しくないんだよ」
思わぬ発言にクラスメイトはドン引き! でも、それでも良かった……。僕は、これからは、彼と共に人生を歩める。ドン引きしているクラスメイトだって、体を脱げば僕の言葉の意味を、きっと、いつか知るだろう。その時に、また笑い合えば、それで充分さ。
葬儀を終えた、次の日の朝……夜明け前に目が冴える。気分も冴えて、とてもじゃ無いが眠れない……。僕は、布団を抜け出した。彼が居るのか? と、窓を開ける。窓からは雨に濡れた跡が残る景色たち。雨雲の間に輝く星が一つ……そうか、彼は星となって輝いて見せたんだ。そう想って、空全体を見回すと、その刹那に星の輝きは雲に消された……。
さあ、夜が明けるよ
悲しくないのは……なぜ? 十夢 @JYUU_MU
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