ダンジョン配信に憑りつかれた男の娘~何万回死んでも潜り続ける、そこにダンジョンがあるから~
江土木浪漫
第1話:配信アーカイブ#288
:うわまだやってる
:ギネスにでも挑戦してるんかこの人
:ダンジョン探索の規約上配信しなきゃいけないけどさあ…
:もうようつべの腹ん中がパンパンだぜ
「あと3日は配信するよ」
:そろそろ森以外の景色を見たいんだが
:あと3日!?
:一週間まるまるダンジョン探索に費やす気かこいつ
:もうさあ、三層のダンジョン見飽きたんだけど!!
:本道から外れてジャングルの中こもって……何目的なのこれ
「ギルドポイントが足りてないから貢献しようと思ってね、病消し草を採取しようとね」
:三層奥地にしか生えないあれかぁ……確かに毒消し草よりレート高いけど、すっごい強い魔獣いなかったっけ
:確か熊だったよな、緑色の
:毒消し草より使い勝手がいい分ギルドポイントのレートも高いけどさあ
:言うて毒消し草も十分おかしいけどななんだよ全部の毒治すって、特定からの血清魔法使う解毒師が馬鹿みたいじゃないですか
:でも一定の需要あるよね解毒師
:家族の不治の病を治す為にあれ取りに行った冒険者が生死不明になるって風物詩だよね
:んなもん風物詩にするな定期
「でもそれきっかけで目覚めてくれる冒険者は確実にいるし、目覚めなくても要救助者増えたらギルドポイント増やせるしでいいことづくめだから、そこまで悪い話ではないよね」
:ひえっ
:新人のことを頭数とギルドポイントでしか見てねぇこいつ…
:人の心とかないんか
:まあ一度配信したら23時間は配信してる人間に人の心があるかっていうと…
:配信してない1時間はなんだよ(困惑)
:枠の立て直し
「なんかすっごい好き勝手言われてる気がする……あっダンジョンりんごだ。あむ、うん酸っぱい」
:オメェに困惑した表情する視覚ねぇべよ
:なに不本意そうな顔してんだ。なに笑顔で酸っぱい林檎食ってんだ
:可愛い笑顔
:いい笑顔
:だが男だ
:男なんだよなあ
:滾るじゃないか
:口の端っこについた果汁舐め取りたい
「君ら本当変態さんだねー。……おわっ死体!?」
:風物詩来た
:皮鎧にショートソード、新人冒険者ってとこか
:うわあ胸のとこ抉れてる…
:爪痕が三つってことは近いね病消し草の群生地
「はぁ、ああは言ったけど……ギルドポイントで収支プラスになるとはいえ、あんま使いたくないんだけどなあ」
:レアアイテムである鬼還の腕輪使ってあげるの優しい
:なんで鬼なんだっけ
:帰還じゃねえんだ…
:鬼籍って言うじゃろ?死体のみを転送できるから鬼還の腕輪
:悪趣味~~~~ネーミング悪趣味~~~~
:ぎ、ギルドで生き返らせられるから
:まあこの子が貯金ちゃんと持ってなかったり保険は言ってなかったりしたら仏さんなるんだけどさ
:鬼還の腕輪知らないって、ここ新規の人来るんだ…
:なんだかんだベテランだからなあ、Aは
:配信時間とアーカイブの時間見てブラウザバックするまでがパターンだけどな
「もうちょいで2年目になる程度だからベテランじゃないよ全然……この人何を求めてこんなところに来たんだろ。誰か特定してくんない?」
:リスナーを鳩に使うな
:新人冒険者なんて夏場の雑草みたいにドンドン出てくるんだから把握してるわけねぇだろこんな場末にいる俺らが
:特定した。冒険者活動半年目の『朝山ミク』って人。最後のアーカイブが丁度熊に襲われるところだわ
:最後の配信、2時間前か
:リスナーよ鳩に使われるな
:両親が不治の病に侵されてるから病消し草求めて冒険者なった口か…
「三層だと治せてインフルエンザまでなんだけど…」
:上手く行ってたとしてもそれって報われなさすぎない?
:まあ現実はそんなもんよね
:病消し草でしか治せない病気のって、確か病消し草でも6層からの奴じゃないと無理じゃなかったっけ?不治の病って態々言ってるってことはそんくらいのじゃないと効果ないような
:さ、三層のでもエイズくらいは治せるから…
:外道に逸れないと見つからない代物だからなあ、病消し草って
:あの、今草むらの方に音が
「……まだ転送させられてないってのに帰ってきたみたい」
:うわうわうわっ
:すっげぇ緑…緑色の熊って存在するんだ…
:保護色の役割はたすんだろうな。体中に生えてる苔も多分その口
:熊か、素人丸出しのテレフォンパンチを避け
:爪えっぐ
:実際に熊と相対したらわかるけどガタイ良すぎてテレフォンパンチ見えないんだよな
:あれと相対するとか普通人生終わるから…
「んじゃ、狩りますか」
:すっごい軽く言うじゃん
:まあAからしたら狩り慣れてるし殺され慣れてもいるからなあ
:突っ込んできた突っ込んできた突っ込んできた!!
「三層のは単純で助かる」
:えっ何投げた? 熊が急にこけたんだけど
:すっごい悶えてる…
:胡椒、チリペッパー、レモンを詰め込んだ卵の殻。A特性獣狩り爆弾
:レシピ公開してくれたので作ってみたけどあれすっごい効き目あるんだよな。視力と嗅覚にダイレクトでダメージ与えるから
「さて、と」
:ナイフで狩るの!? 随分軽装だとは思ってたけども!?
:投げたナイフってあんな刺さる?
:ワイヤー括りつけてるから無限飛び道具だぜー戦法、いつみても精度おかしい
:俺がやったら数回で絡まるね
:あっという間に赤く染まった……切れ味おかしくない?
「そろそろ立ち直る頃かな」
:自分の血で鼻についた獣狩り爆弾パウダー拭い取りやがった
:油溶性だから理にかなってるけどそれを自然の本能でやりおるか
:うわあすっごい怒ってる
:突っ込んできたけどこれ避けられるの!?
:こんくらい避けられなきゃ6層じゃ通用しないぜ
:三層なんだよなあ
「狩るには丁度いい位置」
:ナイフ二つとも投げた!?
:当たってない、当たってないぞ!!
:クロスの軌道とかかっこつけるから…
:熊の股くぐって熊の突進避けてる…うわあ…(ドン引き)
:普通あんな避け方しない定期
:熊の体一回転した!?
:なんか宙づりになってる…えっ何が起きたの?
「ワイヤー引っかけて首を吊らせた。これでゆっくり解体できる」
:なーるほど
:解体用ナイフを構えるんじゃない!それ解体用!!
:切れ味は抜群だけどさあ、抜群だけどさあ…!!
:暴れる熊の背中登ってるよこの人…
:ギコギコはー……しまぁす!!
:こんなんで熊狩れるんだ。俺も今度やってみようかな
:こんな芸当できるのAくらいだから
:今回も納品よろしくお願いします。臓器と皮と骨 \50,000魔物素材研究所
:研究所の人もよう見とる
「よっと。見てみて、熊の首」
:見てみて、じゃないが
:というか血がミクちゃんの服にべっとりついてるんだけどいいの?
:まあ死んでるし
「……あっ」
:あっ、じゃねえんだよ
「殺したのは安全確保するためだから……もう脅威はいなさそうだし、とりあえず転送させておこう。採取してたら忘れちゃうかもだし」
:なんでこの人なんでもない風に流せるんだ熊殺しといて
:あれ五層クラスの魔獣なんだよなあ
:あっさり殺せる奴じゃねえのよ
「……よし、転送完了」
:お疲れー
:ナイス転送
:後は地味な採取と解体だけか
:解体は解体でなんだかんだ見ちゃうんだけどね
:つうか今回新規っぽいリスナー結構いたな
:糞長いアーカイブが糞大量にあるのに全部の配信把握できてるリスナーなんていねぇよ
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