あたしちゃんダイアリー/俺君デイズ(旧題:あたしちゃんと俺君の物語)
あたしちゃんと俺君執筆委員会
1-1:だらける週末
土曜日:朝のまどろみと、ぬるいビールの背徳感
カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の空気中に漂う小さな埃をきらきらと金色に照らし出している。
その光の筋が、あたしの閉じた瞼を優しく撫でる。
重たい瞼をゆっくりと持ち上げると、視界がぼんやりと像を結んでいく。
見慣れた天井。
隣で眠る、愛しい人の穏やかな寝息。
「……ふふ」
思わず、小さな笑みがこぼれた。
あたしの俺君。
少しだけ開いた口元、無防備に投げ出された腕、規則正しく上下する胸。
そっと手を伸ばして、彼の少し癖のある柔らかい髪を指で梳く。
あたしの好きなシャンプーの、甘くて清潔な香りがふわりと漂う。
もっとくっつきたくて、そろりそろりと体を寄せる。
彼の胸に自分の肩を預けると、無意識なのか、彼の腕があたしの腰に回って、きゅっと抱きしめられた。
「……ん」
彼の喉から、低くて甘い声が漏れる。
その振動が肩から直接伝わってきて、お腹の奥がきゅん、と疼いた。
「……あ、おはよ。起こしちゃった?」
「ん……おはよ。……寝心地良すぎて、永遠にこのままでいたい……」
「ふふ、わかる。あたしも、もう一歩もここから動きたくない」
二人でくすくす笑い合いながら、ベッドの上で意味もなくごろごろと転がる。
絡め合った指先、時々触れ合う素足の裏。
言葉なんてなくても、この肌の温もりだけで、心が満されていくのがわかる。
お腹が空いて、近所のコンビニまで二人で散歩する。
あたしは彼のスウェットのハーフパンツを、彼は自分のジーンズを、それぞれ下着の上から履いただけ。
髪もボサボサのまま、顔も洗わずに。
この、ちょっとだけ悪いことをしているみたいな、共犯者の気分がたまらない。
ビールや酎ハイ、たくさんのおつまみを買い込んでアパートに戻る。
そして、買ってきたばかりでまだ冷え切っていない缶ビールを一本だけ持って、ベランダに出た。
「ねぇ、ぬるいの、一本だけ。ここで飲んでいかない?」
「……いいね。今日だけ、特別に」
二人で並んで腰を下ろし、1本のぬるいビールを分け合う。
カシュッ、と小気味いい音。
「ぷはーっ」
「ぷはーっ」
同じような息を吐いて、顔を見合わせて笑う。
「ぬるいけど、なんか落ち着く味だね」
「うん。こういう時間も、悪くない」
彼がそう言って、あたしの肩をそっと抱き寄せた。
あたしは彼の肩にこてん、と頭を預ける。特別なことなんて何もない。
でも、この世界には、あたしと俺君しかいないみたいだった。
再出発です。
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