5-1 何が起ころうとも、最終的には最善へと至る

蒼龍の脈と呼ばれる暴れまくる激流が轟音を立てる「龍哭の滝壺」。

その対岸に、フォーク一味の野営地が見えた。


「両親を殺したフォークで間違いありません」

フィンが扱う辺境伯から拝借した遠見の水晶が、イーグルネスト一味の中心に立つ男を捉える。その隣には、黒々とした威容を誇る『連装式魔導バリスタ』が据えられていた。


フィンの言いぶりに感情の高ぶりに気づくもそれとは別の言葉をアポロは紡いだ。


「しかし、やつら何故ココなんだ・・補給もままならねぇこんなところで暇つぶしでもやっているのか?」

「アポロ、下流はシルバラードでは」フィンの言葉に

「確かにここからだと激流に呑み込まれなければそのまま流れのままにシルバラードへ一直線だ。さっさと攻め立てればあっさり全てが終わっていただろうに。」


「考えてもどうしようもない。オレの行動原理は・・」

「リスクを前にじっとしてたら可愛い子ちゃんを口説くこともできないのよね。(キラッ)」


「ぐっ」

「エステル様、そのような申され方は、キャラ違いです。ご自身を見失われているようで心配です・・。」フィンは心配そうに首をふる。

顔を真赤にしたアポロって可愛いとエステルが思ったところで


「よし。先手をかける。」 とアポロが話を強引に切り替える。

アポロは、シャドウに乗り、エステルとフィンを連れて、瀬の最も緩やかな場所へと向かった。


「アポロ、どうやって…」 エステルが不安げに尋ねる。

「向こう岸の奴らに気づかれないよう、川を遡る」

アポロは、川の轟音にかき消されるように呟いた。

「フィン、川沿いの地形を覚えているか?」

「はい。この先、蒼龍の脈の源流に近い場所は、水深が浅く流れが緩やかになっていました。ただ、そこは尋常ではありません。何者かの邪法で縛られた精霊が、侵入者の魂に反応する警鐘の役割を担わされている…そんな気配でした。」


「気配に敏感な結界ね…」

アポロは、エステルを一瞥した。

エステルは、アポロの意図を察し、小さく頷いた。


「御心のままに、アポロ。我が身に宿るは水の大精霊の息吹。この邪な結界を浄化はできずとも、聖なる流れで一瞬の活路を開いてみせます。」

(いいとこ見せる機会到来~❤️)

(エステル様なんかオカシイ(ジト目))


「すべてはエクセサイズだ」

「エステル様、またアポロ殿の迷言が・・」

「試練を成長の糧とする、そういう前向きな姿勢のことさ」

「苦難は忍耐を、忍耐は品格を、品格は希望を育む』…教えにある言葉です。」

「何が起ころうと、最終的には最善へと至るか・・・懐かしい」


「それは父の言葉です・・アポロあなたは一体?」

「エステルの親父さんは恩人なのさ。おっと昔話は後だ。頼む。」


そんなふたりをジト目で追うフィンがいた。

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