第53話 地伊田桃黄子と唐狩薫衣はフェチを満たすのである。

 ホワイトデーのお返しフェチ満たし、一人目、桃黄子。

 フェチ満たし要望内容――服の袖や裾に息。


 二人っきりになるための別室へ移動後、桃黄子は申し訳なさそうな顔を見せる。

「本ッ当にキモいお願いでごめん……」

「いえ、全然想定内の要望でした」

 もっとヤバい所に息を吹きかける、なんてのも想定はしていたし……。

「そ、それなら……キモいの覚悟で言うとね、こう……アタシが腕をまっすぐ伸ばすからさ、袖とか裾の中に息を奥まで吹き込む感じのを……やってほしい」

「わかりました」

 中々マニアックではあるが……拒否るほどのものではない。

「じゃ……お願いします」

 桃黄子がそっと、私の方へ手を伸ばす。

 私はその手を取ると、指で軽く袖を広げ、その中に息を……。

「ふー……っ」

「おぉぉお……っ♡♡♡」

 ビクビク震える桃黄子。

 右袖やったから左袖もやろう……左右揃ってないとなんかモヤモヤするし。

「ふー……」

「はぁぁぁあ♡♡♡」

 悶えまくる桃黄子……やっぱ可愛いんだよなぁ……この時の桃黄子が。

「はー♡ はー……♡ やっべ……♡」

「桃黄子、涎出てる」

「ちょ、ちょっと立ってらんないからソファ座っていい?」

 二回でだいぶキてる桃黄子は、ふらふらとソファへ。

「あー……でもあんま休んでもらんないよね五分しかないから……」

「その通りなので……このままボトムスの裾にも息やります?」

「……お願いする」

 桃黄子の今日のボトムスは長ズボン。

 私は桃黄子の足元へしゃがみ、そっと靴を脱がせると、裾口を少し広げ、やや内側へ向けて……。

「ふー……」

「くぉおおおっ♡♡♡」

 当然もう片方の裾口にも。

 嬌声と共に悶えまくる桃黄子だが、暴れて私を蹴ってしまわないように必死に脚を動かさないよう堪えてるのが……また可愛いな。

「はっ……♡ はひ……♡ も、桃香っ……♡」

 ソファに沈み込むように座っていた桃黄子が、くいっ、と少しシャツをたくし上げる。

「シャツの……裾って……あり?」

 持ち上がったシャツの下から見える、桃黄子のお腹。

 何度か旅行で一緒にお風呂に入り、裸を見た事はあるはずなのだが……。

 逆に服を来た状態でお腹だけチラリと見えているのが……妙に煽情的で、艶めかしかった。

 私は、ゆっくりと桃黄子の方へ近づくと、そんな艶めかしいお腹に顔を寄せる。

「ふー……っ」

「ひゃあああああっ♡」

 シャツを握る手に力が入り、ビクビクと体を震わせる。

 うん……ちょっとコレ危ない事してる気がしてきた……。

「はっ♡ はっ♡ あ、あと何分っ?♡」

「え? あ、ええと……あと一分ちょいぐらいです」

「ちょっと勿体ないけど……残り休憩で……」

「え、いいんですか!?」

「いや……このまま続けるとね……マジでヤバい所まで息要求しちゃいそうでね……理性残ってるうちにやめとくわ……」

 お、おう……。

 ずっと声トロけてたもんな……。

 別の意味でも危ない事してたな私……。

 一分後、落ち着いた桃黄子を連れてスイートルームへ戻り、薫衣と交代した。


 ホワイトデーのお返しフェチ満たし、二人目、薫衣。

 フェチ満たし要望内容――除菌や洗浄前の私の足舐め。


「あの……最低限、足の指の間にゴミとかついてたら……ティッシュで拭かせてくれませんか……」

「ええ、その程度でしたら」

 薫衣から許可を貰ったので、私はソファに腰掛け、靴と靴下を脱ぐ。

 そして近くに置いてあったティッシュを二枚ほど取り、靴下からほつれた糸クズや毛玉、その他のゴミが溜まってそうな足の指の間を丁寧に拭き始めた。

 使っているのは除菌シートでもなんでもない、部屋に置いてあるただのティッシュペーパーだ。

 せめて水道水で濡らして濡れ拭きしたい……と思うが、それは薫衣の要望とはだいぶ離れてしまうだろう。

 それに、ひとり五分という時間を設けている以上、あまり長い時間拭いてはいられない。

「お、お待たせしました……」

 私は、一応見た目は綺麗になった足を、薫衣の方へ向けた。

「はぁあ……♡」

 薫衣は、まるで宝石でも見るかのような目で、私の足を見つめる。

 そっとしゃがみ込み、私の右足を手に取る。

「ぁ……やはり除菌していた時とはまるで違う香り……♡ 足の匂い限定でわたくしも匂いフェチになってしまいそうですわ……♡」

「勘弁してください……」

 匂いフェチはリコひとりでいい……!

「それでは……♡」

 薫衣が小さな舌を伸ばし、私の足へと近づける。

「ん……♡」

 暖かく、柔らかな、唾液で濡れた薫衣の下が、私の足の指先に触れる。

 舌が動き、足の指を親指から順番に、一本一本、丁寧に舐める。

 指そのものはもちろん、指の間もしっかりと。

 私が拭き残した汚れを拭うように――いや、まだ残っている汚れがないかと探し求めるかのように。

 私はくすぐったさはもちろん感じていたが、それ以上に倒錯感、背徳感、罪悪感、いろんな感情を頭の中で整理するのにいっぱいだった。

「はぁ……♡ 桃香さん……♡」

 私の足を持ち、愛おしそうに頬ずりする。

 ああ、そんなことしたら薫衣の綺麗な顔が私の足で汚れちゃう……と、心の中ではそう思っていたのだが。

 あまりに幸せそうな薫衣の顔に……私は何も言えなかった。

 それから時間いっぱい、たっぷりと私の足を堪能した薫衣は、最後に足の甲に長い長い口づけをした。

 私の足の甲には、薫衣のキスの跡がしっかりと残ってしまった。


 足の甲へのキスは、確か『服従』みたいな意味があった気がするが……薫衣が単に足にキスしたかっただけだと……そう思いたい。

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