No Love, No Sex
パンチでランチ
第1話
バーの片隅で、玲奈はカクテルを指で揺らしていた。
彼女の前に座るのは、大学時代の同級生・達也。偶然の再会だった。
「結婚したんだって?」
「うん、でも……すぐ終わったよ」
玲奈は苦笑いを浮かべる。
達也はグラスを置き、真っ直ぐに彼女を見た。
「理由は?」
「簡単。愛がなかった。だから、セックスも意味がなくなった」
短い言葉に、重い沈黙が落ちる。
玲奈は続けた。
「人って、愛があれば身体を重ねることに意味を見いだせる。でも、愛がなかったら……ただの消費でしかないんだよね」
達也は口を開きかけ、閉じる。
大学の頃、彼女に淡い想いを抱いていた自分を思い出す。
あの頃告白していれば、何か変わっていただろうか。
「……じゃあ、今は?」
「今はね、愛もセックスも、どっちも必要だと思ってる。でも、順番は逆。まず心。それがなければ何も始まらない」
玲奈の目は、過去の傷を抱えながらも澄んでいた。
達也は笑った。
「変わらないな。君はいつも正直だ」
「バカ正直すぎて失敗したんだけどね」
二人は笑い合う。けれど、笑いの奥には、それぞれが抱えてきた孤独と渇きが透けていた。
夜が更け、別れ際。
玲奈は小さく手を振りながら言った。
「No Love, No Sex――それが私のルール」
「じゃあ、Love がもしここにあったら?」
達也の問いに、玲奈は答えなかった。
ただ、ほんの少しだけ頬が赤く染まっていた。
No Love, No Sex パンチでランチ @panchi_de_ranchi
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