第22話 授賞式のひかり
ホールの照明が眩しく、胸の奥が高鳴っていた。
観客席には、ようことねいろの姿。
舞台へと名前を呼ばれ、いろはは震える足で歩み出た。
壇上で賞状を受け取った瞬間、審査員のひとりが穏やかに言葉を贈った。
「あなたの作品には——登場人物の息遣いがありました。ページの余白まで、音が流れていましたよ。」
その一言が胸に深く響く。
つづりと共に描いたあの日々。机に重ねた呼吸のリズム。
全部、届いていたんだ——そう思えた。
客席に目を向けると、ねいろは手を叩きながら、涙をこらえるように口元を噛みしめていた。
そのすぐ隣。長い前髪に隠れた瞳、古びたノートを抱えた姿が——。
「……つづり。」息がもれるようにつぶやく。
目が合った瞬間、彼はほんのわずかに微笑んだ。
「おめでとう」——そう囁いたかのように。
涙があふれ、視界がにじむ。
慌てて拭った、その一瞬のすきに——彼の姿は消えていた。
不思議と胸は軽かった。
(大丈夫。私は描ける。これからも。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます