第22話 授賞式のひかり

ホールの照明が眩しく、胸の奥が高鳴っていた。

観客席には、ようことねいろの姿。

舞台へと名前を呼ばれ、いろはは震える足で歩み出た。


壇上で賞状を受け取った瞬間、審査員のひとりが穏やかに言葉を贈った。

「あなたの作品には——登場人物の息遣いがありました。ページの余白まで、音が流れていましたよ。」


その一言が胸に深く響く。

つづりと共に描いたあの日々。机に重ねた呼吸のリズム。

全部、届いていたんだ——そう思えた。


客席に目を向けると、ねいろは手を叩きながら、涙をこらえるように口元を噛みしめていた。

そのすぐ隣。長い前髪に隠れた瞳、古びたノートを抱えた姿が——。


「……つづり。」息がもれるようにつぶやく。


目が合った瞬間、彼はほんのわずかに微笑んだ。

「おめでとう」——そう囁いたかのように。


涙があふれ、視界がにじむ。

慌てて拭った、その一瞬のすきに——彼の姿は消えていた。


不思議と胸は軽かった。

(大丈夫。私は描ける。これからも。)

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