第18話 ポストに託す夜
夜の街を、いろはとつづりが駆けていた。
抱えた封筒は、二人で描き上げた物語。
——コツン、コツン。
背後の足音がアスファルトに乾いたリズムを刻む。
振り返らなくてもわかる。灰色の影が、じわじわと近づいてくる。
街路樹の隙間で、羽ペンの光がちらりと揺れた。
つづりはいろはの手をぐっと強く握った。
次の瞬間、ためらいなく前へと引っぱる。
その力だけで「早く!」という想いがまっすぐ伝わってきた。
振り返る余裕なんてない。ただ、ポストへ——それだけだった。
目の前に、赤いポスト。
けれど指先が届くまでの数歩が、永遠に引き延ばされたように遠い。
背後の影が、もう足元に迫る。
——カタン。
封筒が落ちた瞬間、ポスト全体が白く閃いた。
つづりの刻印も同時に燃えるように光り、黒がじわりと白に染まっていく。
灰色の番人の影は光の境界で足を止め、まぶしさにかき消された。
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