第9話【魔眼への恐れ】
子供の泣き声がする。
草むらの影でしゃがみ込んで泣いているのだ。
ここでは知識ではなく、
物の怪を調伏する方法は勿論、物の怪が与えてくる攻撃やまやかしから身を守る方法も。
物の怪と相対する時に特に気を付けなければならないのが、彼らが持っている【
魔物には必ず備わっているもので、彼らの瞳には魔力が宿っており、目を合わせるだけで人間に様々な影響を与えてくる。
力の弱い物の怪などは、一瞬目を晦ませ姿を消すくらいのことしかしないが、力の強い物の怪は目を合わせて人間の自由を奪ったり、一時的に動けなくすることも出来る。もっと力の強いものならば、目を合わせただけで呪ったり殺したりすることも出来た。
その為自分の物の怪調伏の儀式に同行させ、敢えて【魔眼】と対峙させたのだ。
ある時から夜、眠る時に目を閉じても、脳裏に彼らの目が浮かんで離れなくなり、眠れなくなって、体調がおかしくなっていった。
同時期に入門した子供たちは皆、厳しい修行をきちんとこなしていたので、自分だけ離脱したら両親や家の人々を失望させると思って、言い出せなかった。
【
ある日機才が、溌春に物の怪が憑りついていることに気づき、隔離して祓いの儀式を施してくれたのだが、三日三晩高熱に魘されて、死にかけた。
無事に祓えたから心配するなと師は言ったのだが、溌春は自分には陰陽師の才能が無いので破門して欲しいと自分から頼んだのである。
『物の怪に憑りつかれたから、心が弱いわけではないのだ。
お前は憑依されてもその力に屈しなかった。お前に憑りついた物の怪は非常に力の強い、執拗な物の怪だった。それを祓うことが出来たのだから、お前には陰陽師としての才がある。奴らに脅かされる人々の苦しみを理解してやることが出来よう』
厳しい師だったので、目覚めるなり叱責され、お前など見込みがない出ていけと追い出されると思っていたのに、まだここにいていいと言われて一瞬は安堵した。
だが、修業が始まると思うとやはりまた再び同じことになるのではと恐怖を覚え、ある時溌春は
実家の
初めて会った祖母は、いざとなれば下働きの人間としてでもいいからここで置いてもらおうと思っていた溌春を温かく迎えてくれて、家族として家に置いてくれた。
私も安倍家の厳格な家風が合わなくて、と陰陽師の修業に耐えられず逃げて来たことを伝えても、嗤いも叱りもせず、溌春の手を両手で包み込んで「仲良く暮らしましょうね」と笑ってくれたのだ。
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