第1章 ― 謎の本

@brahim

第1章 ― 謎の本

その夕方、公共図書館は人で混み合ってはいなかった。

長い本棚はまるで静かな通りのように伸び、古い紙の匂いが空気を満たしていた。


リアンは小さなバッグを肩にかけ、街の騒音から離れた静かな場所を探して図書館に入った。

特定の本を借りるつもりはなく、ただページの間に身を隠したかっただけだった。


指先で埃っぽい背表紙をなぞっていると、古い一冊の本が棚から落ちた。

表紙は色あせ、タイトルはほとんど読めず、まるで長い間誰かに開かれるのを待っていたかのようだった。


最初のページを開くと――

そこには温かみのある手書きの文字でこう書かれていた。


「いつかこの本を見つける人へ……。私は聞いてくれる人がいなかったから書いたのです。」


リアンの息は止まった。

慌ててページをめくると、余白には小さなメッセージがびっしりと書かれていた。詩の断片、短い会話、希望と絶望の間を揺れる言葉の切れ端。まるで正体不明の人物が書いた秘密の日記のようだった。


木の机に腰を下ろし、その本をじっと見つめた。まるで隠された世界への鍵を見つけたかのように。

理由は分からなかったが、心の奥でこう感じた。

これはただの走り書きではない――彼女の人生を変える物語の始まりだと。


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