『無限創造スキルで最果てから成り上がる』

一ノ瀬 凛

追放された「無能」

第1話 無能と呼ばれたスキル

王都の冒険者ギルドは、昼間から酒と笑い声で賑わっていた。

獣人、エルフ、ドワーフ――種族入り混じる冒険者たちが肩を組み、依頼の報告をしたり、金貨を数えたり、武勇を語ったりしている。


その喧噪の中で、一人の青年がカウンターの前に立っていた。

黒髪に黒い瞳。異世界では珍しい外見のせいか、ちらりちらりと好奇の視線が集まる。


受付嬢が羊皮紙を見つめ、首をかしげた。

「……カナメ・アマギ様。授かったスキルは――【スキル創造】、ですね」


その瞬間、ギルド内がどっと笑いに包まれた。


「おいおい、まだ残ってたのか、そんな外れスキル!」

「ははっ、聞いたことあるぞ。小さな火種を作るのに魔力をごっそり持っていかれるってやつだろ!」

「生活便利術どころか、魔力切れで倒れる無能スキルじゃねぇか!」


カナメは俯いた。

確かに、自分のスキルがどんなものかはよく分かっていない。

ただ、この世界に転生して最初に聞かされたとき、周囲が同情と嘲笑を向けてきたのは忘れられなかった。


「……俺だって、やれるはずだ」

小さく呟いた声は、誰にも届かない。



数日後。

カナメは新人パーティに加わり、討伐依頼に出ていた。だが結果は散々だった。


「ちっ、足を引っ張りやがって!」

大剣を担ぐ戦士が怒鳴る。

「お前のせいで依頼は失敗だ! 【スキル創造】なんて役立たずじゃねぇか!」


「ま、待ってくれ。俺だって……!」

言いかけた瞬間、背を強く押され、泥の上に倒れ込んだ。


「二度と顔見せんな!」

仲間だったはずの冒険者たちは去っていく。


残されたカナメは、拳を握りしめて立ち上がった。

悔しさと惨めさで胸がいっぱいだった。



その夜。

ギルドの扉を押し開けると、中は笑い声で満ちていた。

だがカナメに向けられる視線は冷たい。


「無能が戻ってきやがった」

「ギルドに居場所なんてねぇよ」


受付嬢がため息混じりに告げる。

「カナメ様。……あなたのような方を、当ギルドが庇い立てすることはできません。これ以上、依頼を受けることは不可能です」


「……そうか」

カナメは短く答え、背を向けた。


ギルドの扉を出ると、夜風が冷たく頬を打った。

灯りの絶えない王都の喧噪が、どこか遠くに聞こえる。


「……俺は、本当に無能なのか?」

誰に聞かせるでもなく呟いた声が、暗闇に消えていった。



その時、彼はまだ知らなかった。

自分の【スキル創造】が――世界の理すら覆す“無限の力”であることを。

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