第34話 ダメなら次の手だぜ

「撤去しない限りはこのままで残るよ」

「効果が永続するの!?」

「あ、確かに言われてみれば……だな、効果時間を考えたことがなかったよ。だけど、(ブロックは)風化すると思う」

「土の精霊が構造を作り変えた後は、自然の任せる形なのかしら」

 どうだろうか、そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。正直なところ、魔法だからと考えを放棄していたよ。

 今のところ、過去に作ったブロックが崩れ落ちたりすることはない。また、作ったブロックに対し、追加で魔力を必要とすることもなかった。

 ブロック作成とは少し異なるが、作ったブロックを動かす時にはマーモットを出して維持するだけの魔力が必要だ。

「正直よくわかってないんだけど、定期的に崩れているか見に来るくらいならできるよ。補修はすぐだし」

「ここに住んでいるわけじゃないわよね。ここには食べ物も水もないし」

「もちろん、ここに住んでいるわけじゃないよ。土魔法で移動して」

「土魔法でも移動ができちゃうの!? 私も風魔法でここまで来たの」

 ルミナスが言い終わるや否や、フワリと彼女のスカートが浮き上がる。

「お、おお」

 浮き上がったのはスカートだけじゃなく、彼女の体そのものだったのだ!

 足先が地面から数十センチ離れ、彼女の目線が俺と同じところまできているではないか。

「風の精霊に? 精霊の姿が見えないぞ」

「飛ぶだけなら、精霊を具現化しなくてもいけるわ。大して魔力を消費しないし」

 俺の身長より高く飛び上がった彼女が地面に降りてきた。

 気になることがあり過ぎるんだけど! 精霊魔法は精霊を出さなきゃ「お願い」することができないんじゃなかったっけ?

 具現化する精霊の姿も個々人で異なるから、個人差が大きいのかもしれない。

 もう一つは、複数種類の「お願い」ができるケースもあるってことなのかいな。

 彼女は飛ぶだけなら、と言っていただろ。となると、飛ぶ以外もできるってことだから、複数種類のおお願いができると分かった。

 あ、でも、よくよく考えてみたら俺の場合も複数のお願いをマーモに聞いてもらっていたわ。

 俺の場合はブロックを作る、それに関連してブロックを動かす、ブロックに属性を与える、といったことができる。それぞれ、消費する魔力が異なるから、似たようなものか。彼女との違いは精霊の姿を出さずとも風魔法が使えるってところになる。

「精霊魔法は魔力の消費も多いんじゃ? 長距離の飛行もできちゃうの?」

「そうね、ここから西にスネークヘッドの街があるのだけど、そこまで飛んで、3割くらいの魔力を使うかな」

「スネークヘッドって、ここからオアシスより遠いよな……」

「そう変わらないわ。飛べば、だけど」

 地上を進むなら、流砂があるから大きく迂回して進まなきゃならない。空を飛べば、ここからオアシスとスネークヘッドの距離が大して変わらないと聞けたのは良い情報だな。村長から聞いた路は迂回路だし、直線の距離感が分かり辛かった。

「色々教えてくれてありがとう。俺たちは作業をしに来ていたからそろそろ戻るよ」

「橋を作るの?」

「うーん、別の手を考えている」

「へえ、私も見てもいいかな?」

 特に隠すものでもないので、頷きを返しておく。

 

 ◇◇◇

 

 思わぬ風魔法の使い手ルミナスと出会ったことで、少し遅くなったが、やることは変わらない。

「まずは下へ降りるよ」

「はあい」

 浮き上がる彼女をよそにマーモにご登場いただく。もちろん、エルナンから魔力の供給を受けている。

『箱を開けるモ』

「かわいい! あなたの精霊なの?」

 ふてぶてしい顔をしたマーモットを見て可愛いと思う気持ちが分からんが、聞くまでもなくここに精霊使いは二人しかいないのだから、俺の精霊以外あり得んだろうて。

「飛ばなくても、マーモにブロックを移動させてもらって下に降りるよ」

「きゃ、こんな大きな物体を動かすのね! 相当魔力を使うでしょ」

「俺の魔力じゃ全然足らないから、エルナンに常に魔力を補充してもらっているのさ」

「それで二人で一人なのね」

 動くブロックに驚きつつも、納得した様子のルミナスであった。

 

 降りてからようやく、「別の手」が使えるのか実験結果の確認だ。

「マーモ、頼む」

『モ』

 流砂の中からブロックが出てきて、俺たちの前で止まる。

「さあて、ブロックへの影響はどうかな」

 いやあ、橋を作る案が微妙になった時の次の手として、流砂によってブロックにどれくらい影響があるのかを実験しようと流砂の中にブロックを沈めておいたんだよね。一日、二日で変わるものでもないだろうけど、流砂に含まれる精霊によってブロックが流砂になるなら、すでに流砂に変化しているはず。

 精霊や魔力を介さない場合、ブロックに影響を及ぼすのは風化とか浸食とかでじわじわとブロックが欠けて行く。自然現象の場合は長い時間をかけて変化していくものだから、メンテをするにしても年単位の話になる。対して精霊の場合は土魔法を見て分かるように変化は一瞬だ。長く見ても一日待って変化がなければ影響を受けないと見ていいだろ。

 さてさて、引き上げたブロックであるが、特に変化した様子がない。

「流砂をブロックに変化させることは可能。ブロックは流砂化しない、が結果だね」

「だなあ」

 エルナンのまとめに完全同意だ。

「これって何をしていたのかしら? あなたの土魔法がブロックを作り、動かす力ということは分かったけど……」

「ブロックが流砂化しないってことは、橋を作る必要がなくなったってことさ」

 ぐっと親指を立てるも、俺の使う土魔法を見たばかりのルミナスにはピンとこない様子だった。


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