神獣たちも知らないチート精霊魔法の世界〜バトルゲームの熱血主人公を裏切る悪役ライバルに転生した大賢者は、フラグすぎる元弟子の7賢者から隠れてスローライフを満喫中〜

幸運寺大大吉丸@書籍発売中

第1話 ストレスフリーな生活

-side ロダン-



「婚約破棄よっ!」

「そんなっ!」

 パーティ会場では、ウェーメン王国の第一王女が公爵令息を婚約破棄していた。2人とも年齢は10歳前後だろうか?周りはあわあわした様子で見守っている。

 その様子を黒い程よくテンパーの髪にに黒い目をした優しそうな男性--ロダンはめんどそうな表情をして見ていた。

 今ウェーメン王国では国を揺るがすほどの大事件が起こっていた。

 それなのにも関わらず、この国の国民でありながら、『ここでやるなよ』としか、彼は思っていない。

 そもそも、今の彼は冒険者ギルドから駆り出された一冒険者ギルドの職員に過ぎないのだから。


 

「はー、くだらん。その年齢でこの茶番、ようやるわ、さっさと帰るか」

 --スタスタスタ……とロダンはその場から去っていった。


 

「えっ……!?ちょっ……ロダン?あいつまじか」

 ロダンがなんの躊躇いもなく帰って行くのをギルドマスターは顔を引き攣らせて見ている。ロダンが問題児なのはいつもの事で彼もそう言った行動には慣れているのだが、流石に今回に関してはこう思った。『やっぱりあいつ、イカれてるな』……と。


 

 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「ただいま〜」

「ふむ。主人、遅かったのう」

 家へ帰ると従魔のフェンリル--リルがロダンを出迎えている。長年……彼の一つ前の前世である大賢者の頃から忠誠を誓っている。まさに忠犬である。まあ、リルは犬と呼ばれるのも狼と呼ばれるのも嫌らしい。

 あくまでも、自分自身がフェンリルであると言う誇り高きプライドはあるみたいだ。


 

「ああ、なんか王宮で婚約破棄騒動があってね、この国もうダメかも」

「ふむ、だったら見捨てて国を出るか?」

「うーむ、まあもうちょっとこっちにいようかな?ちょっと気になることもあったからね、楽だし」

「ふむ?そうか、まあ主人なら世界を敵に回しても大丈夫だろうし、のんびりここにいるのもありだのう〜」

 リルはどこまでもロダンの旅にダラダラついて行く気満々のようだ。多分一緒に行けば、楽できるとか思っているに違いない。

 そして、ロダンもリルといれば楽できるとか思っている。お互い怠惰でどっちもどっち。

 


「ふー、喉乾いたーウォーター」

 アスターは水を一杯飲む。落ち落ち着いて、深呼吸。思考が冷静になっていく。もう大丈夫だ。

 先ほどまでの事を思い出す。

 そもそも、事の発端は、ロダンが住んでいるカウントリールという、ど田舎の町の冒険者ギルドに王都の冒険者から依頼が来たところからである。

 そんな田舎の冒険者ギルドだ。人材は常に不足している。

 空いているのがロダンしかいなかったため、仕方なく、頼りないギルドマスターの補佐として一緒に付き添ってあげて行った。

 だが、正直実にくだらなすぎたので、ギルドマスターを置いて先に帰ったのだった。

 悪気はなかったのだ、そうロダンは心を切り替える。

 そんな、主人の切り替わった心を見計らって、リルは声をかける。



「相変わらず見事な魔法だのう」

「そうでしょ?精霊の力を借りたから美味しい水が飲めるんだ。ほら、リルも。ウォーター」

 ロダンが使う魔法は精霊魔法--すなわち精霊と契約できたものしか使えない魔法だ。この魔法を使えるのは世界でも限られている。それを、こんな簡単に使うことができるのは、世界は広いと言ってもロダンくらいだろう。

 ちなみに、一般的な魔法は人間の魔力を使って使う魔法だがここでは詳細を割愛する。ごくありふれた魔法だからだ。



「ふー……それにしても、よく働いた!ひっさびさに疲れた〜!ベッドへダーイブ!」

「相変わらず怠惰だのう」

「そこ、うるさーい。静粛に……静粛にzzzzzzzz」

「いいながら自分が寝落ちて黙ってしまうとは……主人もまだ13歳……子供だのう」

 ストレスフリーな生活。それはロダンが一番求めている生活だ。今回は、なんだかんだでストレスも多かったので、ゆっくり休むのだった。



 翌日、まさかあんな出来事が起こるとも知らずに。



――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

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