第6話 月夜のアイドルの告白(ハグ・ささやき・告白)

◆時間:夜。場所:広場。

 神社近くの広場にふたりきりでいる


 SE:夜の虫の音(10秒くらい)

 //立ち位置:正面 声の距離:普通

 風奏と聞き手が向かい合って立っている


「うん、ここなら誰もいないから大丈夫かな?」

「私が映画のシーンを演じるから、君に見ててほしいの」

「映画の中で主人公の女の子が幼なじみの男の子に告白するシーンなの」

「ずっと好きだったのに、いつも一緒にいたから自分の気持ちに気づかなくて……でも、男の子と離ればなれになって、初めて自分の思いに気づくの」

「とても大事なシーンなのに、どうしてもうまくいかなくて……」

「じゃあ、行くね……」

「……はあ……ふう(息を整えて女優になりきる)」


 ここから風風奏が演技モードに入る

 風奏は一生懸命に演技しようとするが、ぎこちない


「……私、ようやく自分の気持ちに気づいたの。あなたが私にとって大切な人だって、やっとわかった。ずっと自分の思いを見て見ぬふりしてたの。だから……」

「わ、私、あなたのこと……ずっと、す、好きで……」


 元の風奏に戻る


「ああ、やっぱりダメ。うまくできない……」

「なんでだろう。どうしてもここのシーンがうまくできないの」

「相手のことが好きなはずなのに、どうしてもちゃんと言えなくて……」


 聞き手「大丈夫。風奏ならできるよ」


「私ならできる? ありがとう」

「でも、どうしてか胸に引っかかってて……」

「そうだ。私のこと抱きしめてくれる?


 聞き手「えっ!?」


「あっ、変な意味じゃないの」

「君に抱きしめられたら、きっと自信が持てる気がするの」


 聞き手「僕なんかでいいの……?」


「うん、君がいい。ううん、君じゃなきゃダメなの」

「君に抱きしめてもらえたら、きっとこの気持ちがわかる気がするの」

「だから、私のこと抱きしめてくれる?」


 聞き手「うん。わかった」


 //立ち位置:正面 声の距離:とても近い


「……ふふ、やっぱり顔が近いと恥ずかしいね」

「まずは軽くしてみよう? じゃあ、一緒にぎゅ、ぎゅう~~~~」


 //立ち位置:左 声の距離:とても近い


「……はあ……ふう……(緊張した吐息10秒くらい)」

「朝よりもずっとドキドキして顔が熱くなっちゃってる」

「でも、君に抱きしめられると、あったかくて……すごく安心する……」

「なんかたくさん元気が出てくる気がする……」


 聞き手「どう? 落ち着いた?」


「うーん、まだまだ足りないかも……」

「もっと抱きしめてほしいかも」


 //立ち位置:右 声の距離:とても近い


「じゃあ、今度はこっちで……」

「もう一度……ぎゅう~~~~」

「……はあ……ふう……ん(緊張した吐息10秒くらい)」

「はあ……落ち着く……やっぱり抱きしめてもらうのっていいかも」

「ふふ、だんだん元気が出てきた」


 聞き手「なんかいい匂いがする」


「えっ……いい匂いがする? あっ、きっとシャンプーの匂い」

「シャンプー、ラベンダーの香りなの。ラベンダーの香りは、とてもリラックスして癒やされるんだって。君が気に入ってくれるといいけれど……」

「……はあ……ふう……(緊張した吐息10秒くらい)」


 //立ち位置:左 声の距離:耳元(ささやき)


「ありがとう。だんだん元気が出てきた」

「お返しに今度は私が君に元気を分けてあげるね」

「いくよ……ぎゅう~~~」

「いつもありがとう。私のことを気にかけてくれて」

「私も君のことを見てたよ。いつも頑張ってる姿をずっと見てた……」


 //立ち位置:正面 声の距離:とても近い


「ふふ、ふふふ……やっぱり恋人っていいね」

「みんなこんな風に抱きしめ合ってるんだもんね」

「じゃあ、最後に力一杯抱きしめるね」


 //立ち位置:左 声の距離:耳元(ささやき)


「いくよ……ぎゅうう~~~」

「……はあ……ふう……ん(リラックスした吐息10秒くらい)


 風奏と聞き手が離れる


 //立ち位置:正面 声の距離:とても近い


「はあ……すっきりした……」

「うん、これで大丈夫。勇気をもらえた気がする。

「じゃあ、もう一度演じてみるね」


 //立ち位置:正面 声の距離:普通


「……はあ……ふう(息を整えて女優になりきる)」


 ここから風風奏が演技モードに入る

 今度は自然な演技でセリフを言う


「……私、ようやく自分の気持ちに気づいたの。あなたが私にとって大切な人だって、やっとわかった。ずっと自分の思いを見て見ぬふりしてたの。だから……」

「私、ずっとあなたのことが好き。これからも側にいたいの。あなたの恋人になりたい」


 元の風奏に戻る


「はあ……言えた。今のはどうだったかな?」


 聞き手「すごくよかった」


「すごくよかった? ほんと!? ありがとう!」

「私も今まで一番自信を持って演じられたの」

「君のおかげで、自信がついた気がする。

「これなら、きっと撮影でもうまくいきそうな気がする」

「もし映画が公開したら、チケットを送るから、絶対見に来てね」


 聞き手「もちろんだよ」


「ありがとう。約束したからね」

「ふふ、楽しみがまたひとつ増えちゃった」

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