私達は、コレでいいの。

@HKSE

   私たちの花は、二度と咲かない。


好き。好き。だーいすき。

貴方の瞳が、瞳孔が大好き。

貴方の体一つ一つ、挙動一つ一つが大好き。



「おっっも」

夏終わり、冬初め。息は、白くならない。

空が高い。雲も高い。そんな時期。

「ちゅ。おもくて、ごーめーん」

「かっっる」

貴方が笑う。

手を繋いだまま、いつもの家に帰る。

同じ身長、同じ制服、同じ髪の長さ。



そして、同じ顔。


「今日の数学できた?」

「図形はできた」

「計算間違えてないか、心配だなぁ〜」

この時間、大好き。

気温も、目に見える視界の色も、そして、少しだけ終わりに近づいていくこの、感覚も。

「今日のアレ面白かったね」

「ああ、アレね。アレ本当は、先生が仕組んだらしいよ」

「うぇ?!マジかぁ〜」

先生やるなぁ〜。っと聞こえる。


驚き方もその後の感想も全部一緒。

それが嬉しい。


「ローソン寄ろ」

「うん」

からあげクン、季節外れのパピコ、そして、一応受験生を意識したラムネを買う。


「店員さん、驚いてた」

「ね。まぁ、珍しいからじゃない?」

私達は歩きながら喋る。

私はからあげクンレッドを一個食べる。

少しだけ辛い。

貴方はパピコを半分に割って、アイスが少ししか入ってない上の部分を渡してきた。

「はい、はんぶんこ」

貴方のジョークが、大好き。

「ありがとう。じゃあ、はい、からあげクンが刺さってた爪楊枝」

私もジョークで返す。

私達だけの儀式で挨拶。

「ふへっ。ごめんごめん。はい、今度こそはんぶんこ」

そう言って、パピコの片方をくれる。

「ふはっ。じゃあ、私も。はい、からあげクン」

からあげクンを二個刺して渡す。

お腹を壊しそうなメニューだけど、私は好き。


「私、好き」

ポツリと言いたくなる。だから、言う。

貴方だから。

「私は、愛してる」

他の人なら、返ってこない返事を貴方はしてくれる。私が一番好きな言葉を言ってくれる。


「私、先に死にたい」

ぶっ飛んだ話題だって、言葉が足りない言い方だって、貴方なら、

「悲しい事言うね」

分かってくれる。

「死んだ姿を見たくない、理解したくない、言われたくないから」

「我が儘だなぁ。そりゃあ、私だっておんなじだよ?」

私達は、歩き出す。

ゆっくりと。

並行じゃない。

貴方は私より歩くのがちょっぴり早いから。


「じゃあ、死ぬ時は言ってね。私もその時に死ぬから」

私がぶっ飛んでたら、貴方もぶっ飛んでいる。だから、

「方向転換してきたな。うん、言うよ。だから、なるべく二人で長生きしようね」

貴方はこの望みも受け入れてくれる。

手を繋ぐ。すぐ離れられてしまう、脆い鎖。

でも、それが私達には、丁度良いから。

だから、いつまでも握っててほしい。

「嘘じゃないなら」

「私が今まで嘘付いてきた事があるかってんだ」

貴方の少し男勝りな喋り方も大好き。

「じゃあ、安心」

「うん」


私は貴方の嫌いなとこなんて、見たことも思った事もなかった。


















今日思ってしまうなんて思ってもなかった。









嫌な音がした。









手が離れた。




ゆっくりと。

急に。















貴方が今まで、私に嘘をついた事がなかった。












貴方は、私よりちょっぴり歩くのが早かった。


















真っ赤な車が鎖を引いた。











貴方が隣からいなくなる。














コケながら、貴方の元へ行く。

















貴方は私に言う。
















「嘘、つき、には、な、りたくな、い、か、ら」













涙が、でない。

息ができない。












でも、



「あな、たが、な、が、いき、しなきゃ、いみ、ないよ」




言葉が紡がない。











それでも、






















「いま、わ、たし。しぬ、わ」














貴方は、嘘つきにならなかった。












貴方は、汗をかいて笑う。







そして、いなくなった。


















私は、貴方が大好き。




私は、貴方が大好き。




わたしは、貴方、が大好き。




わたしは、あな、たが、だ、いすき。









 

あの答えを言ってくれる人が、あの答えを知っている人が、答えが、かえってこない。


































「わたし、は愛してる」









赤く膨れ上がった頬に口付けを。




















わたしも、嘘つきにならないように、







































『えー、次のニュースをお伝えします。

昨日、愛媛県で午後五時四十六分頃ローソンのコンビニ近くで人身事故が起こり、赤い車に乗っていた六十五歳の男性を現行犯逮捕しました。被害者は、18歳の女子高校生で、頭蓋骨の損傷が激しく、その場での死亡が確認されました。また、同じ18歳の女子高校生が遺体で発見されました。警察の調べによると、原因は自殺だと見てこの二人の関係性と身元を調べています』

























「なぁ」

「なん?」

「なんで、この人は自殺しちゃったんだ?」

「はぁ?知らねぇよ」

「事故に遭ってないのにわざわざ自分から死に行くなんておかしくない?」

「だから、知らねぇって」

「....。友人が死んで、パニクったのかな?」

「考えるだけ無駄だよ」

「それか、」

「まだ、言うのかよ」



「それだけ、その人の事を愛していた、とか」


「...。はぁ?」

「まぁ想像するのは自由だから」

「お前が言うなよ」











「あんたら!朝っぱらから言い合いなんかしないでとっとと学校行きな!」






「「ぅ、は〜い」」





「お前のせいだ」「いや、お前が」















「全く。いつまで経っても喧嘩なんかして。

その癖、おんなじ反応するなんて仲が良いのか、悪いのか分からんわ」



































「はぁ〜あ。双子はやっぱり分からないわね」









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