高校生活後悔しないでね!!!

終わってたまるかーーー!!何弱腰なんだよ俺。別にやましいことなんて何もしてないだろ。


「あんた、ぼたんになにさせてんの!!」


「いや……待て……違う……俺は旦那様、なんて呼ばせてない。新山さんが勝手に……」


「旦那様、酷い。私のことはぼたんと呼んでくれると約束したのに」


「いや、してないよ!」


俺はまたもやツッコんでしまった。こんな状況でツッコむのはまずいというのをわかっていながら……。


キーンコーンカーンコーン。


朝のホームルームが始まる鐘がなった。


「あんた、もう2度とぼたんに近づくんじゃないわよ」


「旦那様ーーー」


騒がしい2人は急いで、各自の教室へ向かった。俺も急いで、自分の教室に向かうのだった。


♢♦︎♢♦︎


その日の昼休み、俺はいつものように朝野さん、五十嵐さんと昼食を食べていると、新山さんが教室に入ってきた。


「旦那様のためにお弁当を作ってきたんですの」


新山さんはお弁当を持ってきてくれたらしい。


「ぼたんちゃん、どうしたの?鎌っちの知り合いなの?」


「はい!私たちは結婚するのよ」


「えっ?鎌っちどういうこと」


「俺もわかんないよ。一方的にそう言ってきてて」


「なんか鎌っちって女の子タラシだよね。なんていうか……うん、最低」


「え!?ひどくない?」


「私も……そう思う……」


俺はただ、新山さんが雷にびびっていたの見ただけですが。まさかこんなことになるとは思わないじゃん。


「旦那様、そんなことより、今週の土日、遊びに行きませんか?」


「いやー……今週の土日は……」


俺はこの誘いを受けてしまったらもう後戻りできない気がしたので、断るのが最善だと考えた。


「だめだよ!ぼたんちゃん。今週末は私と遊ぶんだから」


え?俺そんな約束してないんだけど……。


「どういうことですの?旦那様」


「だから、鎌っちの家で、今週末は私が遊ぶの!!」


朝野さんは何か焦っている様子だった。俺は朝野さんがなんで焦っているのかわからなかった。


「では、私も混ぜていただけませんか?」


「私も……」


「まーー、それならいいよ。ねぇ?鎌っち」


全くもって良くないんだが……。だって遊ぶの初耳だし、それに俺の家に人が来るなんて初めてだぞ。どうもてなせばいいかわかるわけないだろ……。


すると、海風さんもやってきた。


「えー!?みんなしてどうしたの?」


「鎌っちの家に週末遊びに行こうって話してたんだよね」


「私も行っていい?」


「いいよ!」


話がどんどん進んでいく。俺に決定権なんてなさそうだな……。俺の家なのに……。


もしかして、新山さんが来るってことは……。


「ぼたんーーーー」


廊下から聞き覚えのある声がした。高瀬さんの声だ。


「いた!ってあんた、ぼたんじゃ飽き足らず他の女の子に声かけてんの?」


会ってすぐに俺は理不尽にキレられた。


「いや、マジで俺からかけたわけじゃないっていうか……」


俺はやっぱり高瀬さんのことは苦手だ。会ったらすぐにキレてくるし……。


「私たち、来週末に鎌ヶ谷くんの家に行くんだけどぼたんちゃんもどうかな?」


「みんな正気?あんな、人の皮を被ったオオカミみたいなやつよ。そんなやつの家に行ったら最後終わりよ」


家に来られて困るのは俺なんだが……。


「まぁー、みんなが行くなら行くわ。もちろん監視としてね」


「やったーー。じゃあさアリっちも連れて行こうよ」


「アリイちゃん?来るかな?」


「あの子いつもマイペースだからな」


「来てくれるでしょ」


アリイさんもまた『玉城山学園の六花女子』の1人だ。俺はまだ会ったことがないけど……。


「じゃあ約束ね。土曜日の9時に玉城山駅集合で」


俺は意見が言えないまま勝手に話は決まった。


♢♦︎♢♦︎


俺は家に帰るとすぐ、琴羽に今日あったことを伝えた。どうせ伝えないとバレて後々にめんどくさくなるし……。


「えーー!?おにぃーの学校の女の子が6人も家に来るの!?」


「まぁ」


「ひまねぇーもいるんでしょ。やったーー料理してもらわないと」


「一応客人だから料理は……」


琴羽がめちゃくちゃ喜んでいる。


「おにぃー、高校入ってから変わったよね」


「どうして?」


「いや、だってさ、昔のおにぃーだったら女の子を家に連れてくるなんて考えられないし、それに今がめちゃくちゃ楽しそうだしね!」


琴羽は笑顔で言った。

 

俺は今、楽しそうなのか?確かに友達ができて色んなことして楽しかったけど、本当にそれだけなのか……。


「琴、その日は絶対に可愛い服でお出迎えしないと・・・・だって未来のお姉ちゃん候補かもしれないしね」


「ちげぇーよ」


俺はサラッと受け流した。


だって朝野さんたちは俺の友達だ。それ以下でもそれ以上でもない。それでいいんだ。


「もぉーー照れちゃって」


「照れてねぇーよ」


「でもね。琴はおにぃーが幸せになってくれたらそれでいいの。だって、おにぃーに友達がいなくなった原因ってさ琴にもあると思うんだよね……」


「そんなことは……」


「だからさ、高校生活、後悔しないでね!!!」


これは琴羽なりの俺への優しさなのだろう。友達がいなかった間、俺のことを救ってくれたのは間違いなく琴羽だ。


「ありがとう」


俺は少し照れながら言った。


「おにぃー、照れてる?」


「うっせー」


その後、俺は父と母にもそのことを伝えると泣きながら、了承してくれた。俺が友達を連れてくるとか泣くほどすごいことかね?親ながら少し俺に失礼な気が……。


♢♦︎♢♦︎


そしてついに『玉城山学園の六花女子』の6人が俺の家に揃う日がやってきた。


「おにぃーー、朝だよ!今日、みんなが来るんでしょ」


 俺はいつものように琴羽に起こされてリビングに向かう。


「朝のニュースをお伝えします。おとといから玉城山駅付近で、痴漢による被害が多発しています。主に女子高生を狙った犯行と思われ、犯人はいまだに逃走中です」


「うわーー、最近ここら辺、物騒な事件が多いね。ひまねぇーとかかわいいし狙われそう……。大丈夫かな……」


最近、家から学校の周辺にかけての駅付近で、事件が多発している。なにも起こらなければいいけど……。


俺はいつものように母が作ってくれた朝食を食べて、身支度を整えた。


「行ってきます!」


「おにぃー、楽しみに待ってるね」


「悠人ちゃん、美味しいご飯たくさん作って待ってるわね」


「悠人、ちゃんとエスコートするんだぞ」


「わかってるよ」


俺は家族全員に見送られて、玉城山駅へ向かった。


♢♦︎♢♦︎


玉城山駅に着くとみんなが待っていた。


「鎌っち、おはよう!」


「鎌ヶ谷君、おはよう……」


「鎌ヶ谷くん、おはよう!」


「旦那様、おはようございます」


「むにゃむにゃ。眠いー」


「あんたね、遅刻よ。1分の遅刻。普通ねこういう時は早く来るのよ」


高瀬さんは相変わらず俺に厳しい。


そして、ものすごく眠そうにしている彼女こそ、アリイ・ウィリアムズ・氷堂ひょうどうだ。彼女は母親がアメリカ人で、父親が日本人らしい。クリーム色の髪と癖っ毛が特徴的な彼女はものすごくマイペースだ。


俺は彼女たちを連れて家に向かって行くのだった。

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