#二人だけのタイムライン
千子
第1話 私の日常
冴えない私だけど、趣味がある。
それは写真を撮ってSNSに載せること。
そんなもの、なんて笑われるかもしれないけれど、これは私にとっては大切な趣味だった。
初めていいねがついた日を覚えている。
あまりに夕焼けが綺麗で、誰かと共有したくて、思わずスマホで写真を撮った。
この写真を持て余してSNSに登録して写真だけ載せた。
そして寝て翌日に一つだけ、いいねがついていた。
HNは糊さん。
私は目をぱちくりさせて、その赤くなったハートを凝視した。
リアルでは友人もいない私に、繋がってくれた人がいる。
それは、とてつもない幸福感だった。
それからだ。写真を撮ってはSNSに載せるようになったのは。
初めは糊さんだけだったいいねも次第に増えていって何万といいねがつくようになった。
褒めてくださる言葉もいただけるようになった。
だけど、私の特別は糊さん。
この人の最初のいいねがなかったら、私はとうの昔にSNSをやめていただろう。
それからもSNSに写真を載せ続けている。
「フォローしてみようかなぁ」
フォロワーはいてもフォローしたことはない。
何万人とフォロワーがいても、私には無意味だった。
糊さんのホームに行って糊さんの日々を読んでいるけれど、フォローする勇気はない。
今度。
今度、糊さんからいいねがきたらフォローしてみよう。
翌朝、学校に行ってとりあえずの習慣を繰り返す。
「おはよう」
私の挨拶に返す人はいない。
SNSで何万件のいいねをもらっても、現実はこんなもんだ。
さっさと自分の席に座って授業の準備をしていると、スマホがバイブで揺れた。
しまった、消音モードにするの忘れていた。
操作するために手に取ると、糊さんから昨日の夜景がいいねされていた。
私は驚き固まる。
私は、糊さんから次にいいねが来たらフォローをするって決めていたの。
自分を裏切ったらダメだ。
震える手で糊さんをフォローした。
フォローに1と書かれて、どことなく嬉しくなる。
「え!?」
後ろの席で男子が驚いた声をした。
なんだろう?
振り向くけれど、スマホ片手に何やら慌てている。
次いで、糊さんからフォローされた。
驚いたなんてもんじゃない!
何度もいいねはくれたけれど、フォローは返してくれなかった糊さんがフォロバしてくれた!
「うそ……」
思わず溢れた言葉に周りの女子が反応した。
「どうかした?」
「な、なんでもない……」
思わず俯く。
長い前髪がすべてを遮断してくれたらいいのに。
スマホを見て、糊さんと相互になった喜びを噛み締める。
私の居場所はここにある。
この時は、そう信じていた。
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