22

 ダインスレイフと、アガリアレプト、サタナキア両将軍との闘いは、おたがいに決め手がなく、膠着状態になっていた。

 ダインスレイフにとって厄介なのは槍のアガリアレプトのほうだった。ダインスレイフの斬撃をことごとく弾き返すだけでなく、鈍重なサタナキアを狙って斬りかかろうとしても〈先の先〉でこちらの攻撃を潰してくるのだ。

(これではいつまでたっても埒があかぬ。先にアガリアレプトを片づけなければ)ダインスレイフは一計を案じた。

 ダインスレイフは執拗にアガリアレプトを攻めた。アガリアレプトに斬撃を槍で受ける感触を植えつけるために──

 ダインスレイフの渾身の一振りがアガリアレプトの首をとらえた。しかし、それよりもはやくアガリアレプトの槍がダインスレイフの斬撃の軌道上にかまえられ、打ち落とそうとした。その刹那──ダインスレイフは霞となり、消えた。

 アガリアレプトは、体に刻まれたあの斬撃を弾く感触﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅がこないので、拍子抜けした。気がぬけた。

 それこそがダインスレイフの狙いだった。一瞬の油断。それを生じさせるための布石。

 霞となったダインスレイフの刃は、槍をすりぬけたあと、瞬時に実体化し、アガリアレプトの首に吸いこまれていった。

 アガリアレプトの頭が宙に飛び、切断面から血が噴水のように噴き出た。

 のこされたサタナキアをみたダインスレイフは落胆したようすで言い放った。

「役不足じゃのう」

 振り上げたサタナキアの鎚鉾が振り下ろされることはなかった。なぜなら鎚鉾を振り下ろす前にサタナキアの両腕が斬り落とされていたからだ。それから、サタナキアの両脚、胴体、首が斬り落とされた。しかしそれでもダインスレイフの斬撃はやまず、最後にのこったのは細切れの肉片だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る