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 天使たちを全部片付けると、ボクたちは玉座の間にいそいだ。きっとそこにルキフグスがいるにちがいない。

 途中でも何度か天使の攻撃を受けたがなんとか切り抜け、玉座の間の手前まできた。玉座の間の豪壮な扉のまえには、天使ではなく、二人の悪魔が立ちはだかっていた。

「アガリアレプト将軍、サタナキア将軍……まさか貴殿らもルキフグスにつくとは」

 隠者はショックを隠せないようすだった。

『王に城をまかされ、本来なら天使どもの侵入を防がねばならないはずの将軍が、天使どもをまねき入れたというのか! 恥を知れ!』グリムは叫んだ。

「変わり果てたお姿になられましたな、グリモワール様。王族が劣等種の体に宿るとは。グリモワール様こそ恥知らずなのではありませんか」

 悪魔将軍の一人が嘲笑した。劣等種とはボクのことらしい……。

 そんなことよりもボクは、〈グリモワール〉という名前が気になった。〈グリム〉は略称で、本当の名前は〈グリモワール〉というのか? などと呑気にかんがえていた。

 ダインスレイフが前にでる。

「将軍ふたりがワシの相手をしてくれるのか。それはそれは、光栄なことじゃのう」そういうと、ダインスレイフはボクと隠者にむかって、「先にゆけ。ここはワシが引き受ける」といった。

「いやいや、無理ですよ。二人が通してくれるはずありません」とボクはダインスレイフに抗議した。

「大丈夫大丈夫。かまわずゆけ」と、ダインスレイフはボクと隠者の背中を押した。

 ボクと隠者はおびえながら悪魔将軍の横を通りすぎようとしたそのとき、

「黙って通すと思うたか!」と将軍の一人がもっていた槍でボクを突き刺そうとした。

「ワシから目をそらす余裕があるのか」

 ダインスレイフが将軍の耳元でささやく。すでにダインスレイフの刃が将軍の首筋に触れていて、いまにも首を刎ねようとしていた。しかしそこはさすが将軍、間一髪身をひるがえし、刃を躱した。

 両者、間合いをとる。

 ボクの目の前にダインスレイフの背中があった。

「ほれ、さっさとゆけ」

 ダインスレイフが将軍らをさえぎってくれている隙に、ボクと隠者は玉座の間へと逃げこんだ。

「さあさあ、たのしもうじゃないか。将軍」

 ダインスレイフは心底、闘いを堪能していた。

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