第17話 マヒデブラン妃とムスタファ皇子
マヒデブランは静かに中庭の緑を見ながら
不安な気持ちをいつも抱えていた。
そうして、軽くため息をつく
ヒュレカムとの争いで…マヒデブランは
トプカプ宮殿から半ば追い出され、離れた地の離宮に居る事を強制され
様々な事情でトプカプ宮殿の付近に
こうして、秘密裏に来る事はあるが…
今は都のコンスタンシノーブルにある
今は味方のイブラヒム大宰相の屋敷の一つに
マヒデブランはしばしの滞在をしていたのだった。
◇ ◇ ◇
「スレイマン大帝様
幼い頃からの友でもあって寵愛を受けたイブラヒム
元はギリシア人の奴隷で、年が近く…それは仲く過ごしていたそうだけど
そのイブラヒム大宰相が
今は私達に味方してくれているけど…これからどうなってゆくのかしら?」
「状況次第でイブラヒム大宰相は気持ちを変える」
「ヒュレカムをスレイマン大帝に献上したのは
イブラヒム大宰相だもの」ポツリと呟いた
「私の愛しい息子、誰より素晴らしい皇子
シェフザーデ(皇子)・ムスタファ」
そんな時だった
誰かが部屋の扉を開けた 其処に立っていたのは
ムスタファ皇子
◇ ◇ ◇
「母上」 「まあ、私のムスタファ皇子」
「部下から母上の体調が悪いと聞き、心配しました」
ムスタファ皇子は
母親のマヒデブランを見つめながら話し出す
「ええ、大丈夫よ…心配をかけたわね ほんの少し体調が悪くて…でも、もう大丈夫よ 私のムスタファ皇子」
◇ ◇ ◇
そっと母親のマヒデブラン妃は
自分の愛しい一人息子ムスタファ皇子を抱き締め
伸びた背の高い皇子の顔、父親のスレイマン大帝に似た端正な面立ちの顔の頬を撫ぜて、ほほ笑む
「誰か、飲み物と茶菓子を…」
「はい、マヒデブラン妃様」
使用人達により、素早く用意されて テーブルには
飲み物のサハラブ、アイラン
ナツメヤシ(デーツ)のお茶などが置かれた。
他にもボレク
薄いパイ生地にチーズや肉等を詰め焼いた
伝統的なパイ菓子
バーデム・エズメスィ
エデルネの伝統菓子 アーモンドと砂糖を練り合わせたマジパンのようなお菓子
アイヴァ・タトゥルス
マルメロを二つに切り、シロップで煮詰めて赤色に染めたゼリーのようなトロミがある
ジェゼリイェ
「ジェゼル」はアラビア語で「ニンジン」ニンジンを使った少し固いロクムの一種
ペクメズのかかったヨーグルト
ペクメズは
果実(主にブドウ、マルベリー、イチジク)の果汁を長時間煮詰めて作られた天然の濃縮シロップ
オスマン帝国時代の主要な甘味料で砂糖が貴重な産物ゆえに良く使われたもの
「さあ、どうぞ 他にも用意するわ ジャスミン茶もコーヒーもあるの」
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