第14話 病身の皇子と兄皇子達 様子を眺めるヒュレカム

病を抱え、皇子の一人、ジハンギル皇子は自室のベッドでうとうと…していたのだった。


ドアの扉が開く

「ジハンギル皇子様 兄皇子様達がお越しになられました」

召し使いの声に嬉しそうに瞳を見開き

表情は本当に嬉しそうな笑顔になるジハンギル皇子


「兄上達、兄様方 二人とも来て下さったのですね」     

「ジハンギル皇子 身体の方は大丈夫かな?」


「はい、兄上 ムスタファ兄上、メフメト兄上」


「本を沢山、持って来たよ 

それからお前の好きな果実も忘れずにね」


「うぁー!有難うございます 嬉しいです」


「無理はせずに 医者達の薬を飲んで養生してくれ」


仲の良い兄弟 睦まじい様子

ムスタファ皇子にメフメト皇子は代わる代わる

病身の弟皇子…ジハンギル皇子の手を優しく握り抱き締めた


そんな様子を偶然、やって来ていたヒュレカム妃は

ドアの隙間から三人に気づかれぬようにそっと静かに眺めていた。


マヒデブランの息子の皇子 


ムスタファ皇子


確かに人柄も良く、誰に対しも


マヒデブランと大喧嘩した私、ヒュレカムに対しても


穏やかな様子で敬い、礼儀正しく接して来るのだ


それに軍団の評判も大変、良く人望も高く

優しくて人気者だ


だが、しかし…


あのマヒデブランの息子で長子


もし…もしも



彼ムスタファ皇子が皇帝の座に就いたならば…

……

…………………


このオスマン帝国には恐ろしい前例がある


それは『兄弟殺しの法』…東ローマ帝国を滅ぼしたメフメト二世の法 彼は兄弟を殺し


その前例、『兄弟殺し』を法にまでしている。

帝国の安寧の為の法 国の内乱を防ぐ為の法


マヒデブランは私を憎んでいる。


◇ ◇ ◇

まあ、憎んで当然なのだろう


大帝スレイマン様の寵愛を奪い、一人占めしているのだから…


ハーレム、後宮は生き延び、愛を得なければ

いけない場所


後宮の女がほんの運命の悪戯で殺される事などある場所なのだ


ボスポラス海峡に麻袋に詰められ

沈められた女友達…助けられなかった女友達


幾つもの

恐ろしい記憶が頭の脳裡に浮かび消える。

◇ ◇ ◇

今、あの笑顔を見せるムスタファ皇子…

そして


マヒデブランとムスタファ皇子には大宰相イブラヒムの後ろ盾まであるのだ。


ムスタファ皇子と他の兄弟、弟皇子達は


私、ヒュレカムの子供


仮に無事にムスタファ皇子を退ける事に成功して


私のメフメト皇子

あの子を皇帝の座につけたとしても


他の皇子、私ヒュレカムの子供達の運命は?


私の子供達

セリム皇子、ジハンギル皇子にバヤジト皇子


他の皇子達を死なせずに…生かせるのか?


不安ばかりがヒュレカムの頭をよぎる



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