第5話 弟の皇子、バヤジト皇子と道ですれ違う
エステル・ハンダリ ユダヤ人の女商人
後宮、ハレムに出入りする御用達商人、女商人(キラ)は忙しそうに店の中で動き廻っていた。
「数日後には後宮に行く予定、皆様に持ってゆく荷物にヌール・バヌ様に頼まれた品物を持ってゆかないと…ああ、本と嗜好品は間違いなく揃えたかしらね」
◇ ◇ ◇
「また、彼女エステルにヴェネチアや欧州の話が聞きたいのだけど」
「菓子のマカローネ(※マカロンの原型)」
「それに…沢山の本!」ヌール ・バヌは呟いた。
「ヌール・バヌ様、お菓子がございましてよ」
後宮の女が声をかけて来た。
「あら、バーデム・エズメスィ(アーモンド菓子)ね…」大好きな菓子を一口ほおばるムールバヌ
「飲みものにはチャイにボザ(穀物を発酵させたもの)」
「次はコーヒーにしょう」
「ああ、美味しいわ…セリム様も任された地方の政務のお仕事中、しばらく留守…ふぅ」
「ヌール・バヌ様、ヒュレカム様がエデルネか取り寄せた菓子があるから、遊びに来て欲しいとの事です」
「まぁ、あのヒュレカム様が好きなバーデム・エズメスィ、アーモンドに砂糖を練り合わせた菓子よね」
うきうきしながら、ヌール・バヌは支度をして
ヒュレカムの元に向かう
「お土産には菓子のバーデム・エズメスィにロクムに遠い温暖な地域から取り寄せた果物」
「本に絹織物は数日後に届ければ良いわね」
すると…
「あら?」「ああ、セリムの寵姫か」
広い中庭の道で、セリムの弟バヤジト皇子に出会う。
「ご機嫌よう、バヤジト皇子様」
「お前も相変わらず、元気そうで良かったな」
「俺は母上に久しぶりに挨拶に来ただけさ」
それから、しばしの間
じっとヌール・バヌの顔を見るバヤジト皇子
「綺麗で可愛いよな、お前…兄のセリムより
先にお前に出会えたなら、ヒュレカム母上に頼んで…」
「えっ?」「ああ、何でもないさ」
「セリム様に何かお伝えしましょうか。ら」
「昔、セリムと一緒に割礼の儀式を受けた時は
国中で祝いをして、あの頃は楽しかったよ」
「セリムによろしくな、ヌール・バヌ」
バヤジト皇子を見送るヌールバヌ
ヒュレカム様は兄弟殺しの法を案じて
仲良くされるのを望まれている…一人が帝位に就き
残りの兄弟達は例えば、遠い地方の高官に…。
果たして、どうなってゆくのだろう
私、私も…気がつけば、故郷から遠い異郷の地に居るのだから…。
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