第10話:死神の活躍。

金髪男、三田村の取り調べで、またひとりの男が浮かびあ上がった。

その男もやはり池田翔子と繋がりがあった。


その男の名前は「郷田 晃ごうだ あきら

三田村と同じ穴のムジナ・・・そいつも遊び人、三田村よりヤバそうなやつ。


「出て来るのはそんなやつらばっかだな・・・まともな奴はいないのかよ」


「まあ、出会い系になんか出入りしてる人たちだからね」

「だいたいは、そんなヤリモクやヤリチンばかりになるんだよ」


実は雛はそいつ、郷田を知ってるのだ・・・いどころも・・・。

以前、窃盗事件を担当した時、聞き込みで郷田の女が経営している「ディム

ハイド」ってバーに行ったことがあったからだ。

郷田の女がバーのママをやっている。


だから雛と壮介はまず、その「ディムハイド」を訪ねることにした。

郷田はヤバい男・・・キレると何をするか分からないヤカラ。

だから、ふたりは死神の善次郎にも一緒に来てもらうことにした。


とりあえず善次郎を店の外の待たせて、壮介と雛はひとりで店に入った。

店の中は客がまばらで、さほど繁盛してるようには見えなかった。

でカウンターの中に、もうとっくに女を捨ててるようなヤレたママいた。

郷田の女なんだろう。


ふたりはカウンター席に座った。


目の前の女を見てママが言った。


「いらっしゃい、なににする?」


なんで夜の店の女はきまってダミ声なんだろう・・・なぜか共通してるよな。

って壮介は思った。


「郷田さんいますか?・・・ママさん」


「おネエさん、あんた誰?・・・あきらに何の用?」


「ちょっと、お聞ききしたいことがありまして・・・」


「あんた〜・・・サツだよ!!」


ママは奥の壁の方に向かって怒鳴った。


そしたら奥の席にいた男が慌てて逃げだした。

ママは雛を警察だと感を働かせた・・・旦那が旦那だけにこう言う

ことには慣れてるんだろう。


雛はすぐその郷田の後を追った。


「逃げないで・・・私は警察じゃない・・・聞きたいことがあるだけ

だから・・・」


そう言ったが郷田の耳には入ってなかったみたいだった。

すると郷田は慌てていたのかテーブルに足をぶつけてずっこけた。


雛は郷田にあと一歩ってところで奴は立ち上がって表のドアから外に逃げた。


「雛じゃなくて俺の体だったら捕まえてたのに・・・」

「雛、気をつけろ・・・郷田、パニクってるからヤバいぞ」


「うん・・・気をつける」


店の外に待機してた死神の善次郎、たった今ドアから慌てた表情で出てきた男

が俺が言っていた郷田だとすぐに気づいたようで、


「止まりなさい・・・」


そう言って郷田の前に立ち塞がった。

郷田にとって新たな敵の存在。


善次郎を見た郷田は、ポケットからナイフを取り出して善次郎を威嚇した。


「そんなもの私に通用するとでも?」


「どけ!!」


そう言うと郷田は善次郎めがけてナイフを構えたまま突っ込んで行った。

止める間も無く善次郎はまともに郷田を受け止めた。

郷田の持っていたナイフが善次郎の腹に突き刺さった。


ナイフはたしかに善次郎の腹に突き刺さったが、ボヨ〜ンって跳ね返された。

善次郎は平気な顔をしてニタニタ笑っていた。


「な・・・なんだおまえ?」


「死神だよ・・・バカもんが」


善次郎は郷田の頭をこれでもかってくらいボカスカドツき回した。

郷田は死神にボコボコにされて、その場に気絶した。


「愚か者め・・・人間ごときが死神を倒せるとでも思ったか?」


店のドアから郷田を追って慌てて出て来た壮介と雛・・・目の前で郷田が倒れてる

光景を見て、そこに座り込んだ。


「雛ちゃん、壮介・・・お疲れ・・・大丈夫かな?」


「善次郎さんありがとう〜」


「ありがとうよ、善次郎・・・来てもらって正解だったよ」


まあ、郷田にしてみれば相手はただの、うだつの上がらないおっさん

にしか見えなかったんだろう・・・死神だと知っていたら怖くてそのまま逃げて

いたかもしれない・・・。


こうして壮介と雛の手柄で郷田は、とりあえず公務執行妨害で警察に連行された。


不死身の死神がバックアップについてくれてる、ふたりには善次郎はなくては

ならない貴重な存在だった。


つづく。


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