第9話:想いが募っても叶わなぬ恋。
行き詰まった時は、一度立ち止まってみる。
そこで壮介は雛に俺と一緒に温泉へでも行こうって言い出した。
「雛・・・温泉にひとっ風呂浴びに行かないないか?」
「こういう時は焦りは禁物・・・」
「夕べお風呂で散々私の裸、見といて?・・・それに事件の最中に
のんびり温泉に入ってまた私の裸見るつもり?それにサボってたら部長に
見つかってお目玉だよ?」
「いいんだよ・・・こう言う時しか温泉なんて行かないだろ?」
「それに雛の裸なんは見慣れてるよ・・・今更だよ」
「な?事件のこと考えても迷宮を彷徨うだけだぞ・・・ここは温泉!!」
「う〜ん・・・まあいいけど、でも温泉でしょ?」
「他の女性も来てるんだよ?・・・壮介、ひとりひとり視姦して回るつもり?」
「犯罪じゃないだろ?・・・いいじゃないかよ」
「この先にさ・・・新しい温泉リゾートが出来てるんだ」
「そこへ行こうぜ・・・飯も食えるし、海が見える場所で休憩もできるからさ」
「知らないからね、私は・・・」
で、壮介は渋る雛を連れて温泉に行った。
意見が合わないまま雛と壮介はリゾート温泉とやらに到着・・・。
なにわともあれ温泉、温泉。
とうぜん雛は女だから女湯に入るわけだけど、誰も雛の体に壮介がいるなんて
思ってもいない。
だから壮介は他の女性のストリップを見たい放題。
「このスケベ男・・・こう言う時だけ壮介に私の体から出って欲しいって
思うのよね」
「固いこと言わない・・・絶対俺が池田 翔子殺しの犯人見つけてやるから」
中に入ると、露天になってて中央にはデカめの湯船があった。
周りに電気風呂とか、なんか知らないけど小ぶりの湯船が何個もあった。
別にスパなんかもあるって話だった。
まあ、そんなにあっちこっち入ってもしょうがないから、ふたりは中央の
デカめの湯船に浸かった。
上を見上げると青い空が広がって、白い雲が流れていく・・・。
「気持ちいいじゃないかよ、雛・・・きっといい案浮かぶぜ」
「ならいいけど・・・」
「なんだよ、おまえも楽しめよ・・・楽しめる時に楽しまないと損だぞ」
雛は体が温まるまで湯に浸かって今回の事件について考えをまとめてみた。
「壮介、やっぱりママ友情報はあなどれないよね」
「そうだな、池田 晶子と、なにより日頃から接触してたのはママ友だからな・・・そこは、まだ掘り下げる価値はあるかな」
「それより、ここはクセになるな、雛」
火照った体に涼しい風がめちゃ心地よかった。
で、体も温もったし・・・のぼせる前にと思って、ふたりは風呂からあがった。
風呂場から廊下に出ると大広間に続く途中にあった自販機で飲み物を買った。
「雛、このまま海が見えるって大広間に行ってみるか?」
「うん・・・いいね海見てみたい」
大広間を除くと真新しい畳がいい匂いをはなっていた。
重ねてあった座布団を二枚取って窓際に陣取った。
「ほら・・・海が見えるぞ・・・雛・・・」
「ほんとだ・・・窓からも涼しい風が入って来て気持ちいいね」
「雛、今まで温泉くらい来たことあるんだろ?」
「そうだね・・・壮介と出会う前にね・・・同級生の女子と一度、他の
温泉に行ったことあるよ」
海を眺めていた雛が、急に意味深なことを言い出した。
「壮介が私の体に入って、いろいろ揉めることもあったけど、今日まで
なんとか上手くやって来れたよね」
「もし私と壮介がひとりひとりの関係として出会ってたら私たち恋人同士に
なってたのかな?」
「恋人?・・・ああ、どうだろう、考えたこともなかったわ」
「壮介がもし私とエッチしたいって思っても出来ないんだよね」
「その逆も・・・私が・・・その・・・思っても」
「何言ってんの?おまえ・・・」
「そんなことさ・・・それ言い出したら俺だって切なくなるじゃん」
「こんなにお互いのこと分かり合ってるのに・・・絶対交わることないんだぜ」
「切ないだろ?」
「想いが募っても叶わない恋って悲しいね・・・壮介?」
「想い募ってって・・・雛・・・おまえ俺のこと好きなのか?」
「な、訳ないでしょ?・・・壮介が生きてここにいたら好きになってないし
こんなスケベで変態男なんか無理でしょ?・・・」
「おまえ、今、叶わない恋って言ったよな」
「言ったよ・・・そうだよ言ったよ・・・私、壮介のこと好きだもん」
「おお〜犯人が見つかるより驚きな告白」
「告白しても・・・諦めるしかないんだもん・・・」
「壮介・・・なんで死んじゃったのよ・・・なんで生きて私の前に現れて
くれなかったの?・・・ひどいよ」
「おいおい・・・今更、それ言う?・・・俺に生き返れってのかよ?」
「それは善次郎に言っても無理な相談だろ?」
「それに生前の俺の体はとくにないんだからさ・・・やっぱり無理な話だよ」
「残酷だよ・・・好きな人がいても永久に結ばれることないんだから」
「それがおまえの本音なんだ、雛」
「俺には何も言えない・・・これからもよろしくって言葉以外は・・・」
「うん・・・無理言ってごめん、いいよ・・・現状維持で・・・」
そう言いながら雛の目から一筋の涙がこぼれた。
思わぬ雛の告白だった・・・だけど、どうしようもなく切ないふたりだった。
「さ、また犯人追うぞ、雛」
「最終的に犯人が見つかった時、雛ひとりじゃ危険だから死神の善次郎にも
手伝ってもらおうぜ・・・どうせヒマしてるだろうからさ」
「うん・・・今度こそ絶対犯人捕まえようね、壮介」
つづく。
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