壮介（そうすけ）の魂を雛の体に入れた死神の善次郎は無責任にもあの世に帰ってしまった。

なんて無責任な男、いや死神。

「なに？あなた男でしょ？・・・なんで女の私の体に入って来てるの？・・・

もう信じらんない」

「それは俺のセリフなんだけど・・・」

「どう言うことよ、分かるように説明して？」

雛にそう言われて壮介は母親が病院へ運ばれたところからはじまって母親の

死に耐えられず自分も死んじゃったこと、その後死神が現れて、あんたの

魂はもう自分の体には戻れないから現世で消えて無くなる前に誰かの体に

憑依するしかないって・・・。

やむなく君の体に入ることにして、ふと気持ちよくなって目が覚めたらこんな

ことになってたってこと・・・まさか君が生きてるなんて思ってなかったから・・・

壮介はそこまでを雛に説明した。

「待ってよ・・・なに？・・・その死神の指示で私の体に入って来たの？」

「いやこの病院内で亡くなった人がいて、その人の体なら入れるって死神が

言うから・・・」

「そか・・・私、死んでると思われたんだ」

「どうやらそうみたいだね・・・君には君自身の魂が存在してるみたいだもんね」

「ちょっとした間違いってやつ？」

「ちょっとした間違いじゃないでしょ？私はイヤだよ、これって人格がふたつ

あるってことでしょ？それも普通の二重人格と違って、ふたつの魂が同時に

目覚めてるってことじゃない・・・そんなのややこしいし迷惑だよ・・・」

「俺だって女の体になんか入りたくなかったよ」

「出られるもんなら今すぐ出たいけど死神が帰っちゃったから出る方法も聞け

ないし・・・どうやったら出られるのか俺には分かんないよ」

「だけど、あなたが私の体の中に入った時のショックで私、仮死状態から蘇っ

ちゃったみたいだね・・・」

「あなたがもし私の体に入って来なかったら私はあのまま死んだと思われて

火葬場で焼かれてたんだよね・・・わ〜こわ〜」

「それに不思議だけど病気のせいで気力も体力も失せてたけど・・・今は

すごく気持ちがスッキリしてるし体自体も力が漲（みなぎ）ってる気がする」

「そりゃ魂がふたつも体に入ってるんだから、その影響は多大なるもんなんじゃ

ないの？」

「メリットのほうが多いんだよ、きっと・・・よかったじゃん仮死状態から

復活したんだし体も元気になったんだから」

「よくない・・・別々の意識がふたつもあるんだよ、ウザいったら」

「こうなったら仲良くやるしかないよな？」

「思考がふたつあったら協力しあえるし・・・一人の知恵より二人の知恵って

言うじゃん 」

「それを言うなら一人の知恵より十人の知恵でしょ？」

「うんまあ、そうとも言う・・・」

「たとえばバイクで言うなら単気筒から二気筒になったってことだろ？」

「原チャの50ccが100ccになったってことなんだから、もう30キロで走らなくて

いいし二段階右折もしなくていいんだよ、タンデムだってできるし・・・」

「なにノ〜天気なこと言ってるの？たとえがマニアックすぎるよ」

「あのさ、出て行くのは無理そうだから君の体に同棲させてもらっていい？」

「なんかさ、俺まだ死ぬ予定じゃなかったんだって・・・そう言うやつの魂って

現世では無になるんだって・・・そう言うのイヤだからさ・・・ね、いいよね」

「同棲って恋人同士じゃないんだから、それを言うなら同居でしょ？・・・

しょうがないわね」

「お〜だけど俺は男なのに・・・今日から女でもあるんだよな？・・・おおおおお」

「まじでか？・・・なるほど〜・・・それってつまり・・・」

「ヤな感じ・・・なにかとってもイヤなこと考えてない？」

「いや、だからこれからは新しい自分のこともっと知っておかなきゃって思って」

「まずはいろいろ確かめてみたいと・・・」

「いろいろって？確かめるって？・・・・絶対変なこと考えてるでしょ？」

「その変なことってなんだと思ってる？」

「変なことは変なことだよ、スケベ男子が思いつきそうな変態なこと」

「スケベ男子は合ってる・・・まあ・・・変態も・・・」

「変なこと無理して考えてなくても、いずれ風呂に入るだろ？・・・そしたらさ」

「やめて・・・それだけはやめて、お願いだから」

「だってさ、一生目をつぶっては、ふたりとも生きていけないじゃん」

「遅かれ早かれ俺に見られるんだから君の裸・・・覚悟決めたほうがいいって」

「お願い・・・死んで？」

「一度死んでるんだって・・・もう死ねないからな・・・魂になってから

俺、君のこと気に入っちゃったから、次に死んで魂になっても、また君に入っ

ちゃうよ」

「やめて！！他の人にして」

ひとつの体にふたつの魂・・・元々雛の魂は雛が産まれた時から宿ってるもの

だから後から入った壮介の魂は雛の体に間借りしてるって状態なんだろう。

つづく。