ケヤキ

青城澄

ケヤキ


そんなに

ため息ばかりつかないで

塩辛い涙を煮詰めて

焦がしているばかりでは

魂が根無しの花のように

いつか枯れてしまう


胸がせつないのは

気持ちが焦っているからです

焦っているのは

何も見えなくなっているからです


あなたがこだわり続けているものが

あなたの魂を呪縛して

まわりのすべてのものから

遠ざけてしまっているのです


空の明るい真昼に

ロウソクを何本灯しても

見ようとしないものは見えない

網にかかった人魚を

海に解き放つように

少しは息を抜きませんか


あなたを縛っているものは

たわいもない小さな暗示なのです

蟻のようにちっぽけな一本のピンが

あなたの影を刺して

動けなくしているだけなのです





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ケヤキ 青城澄 @sumuaoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ