第4話 ブレない宿屋?月下美人
「ひ、人気が全然ねぇな……」
南門から続く大通りに人の姿が見えない。
「でも建物の中に人は居るっぽい? ……地球滅亡で最期の時を家族と過ごすみたいな状態になってるみたい」
ユエはうーんと首傾げる。
地球滅亡と同レベルになってるとかあの海蛇相当やばいんだな。
……普通に首切り落とせたけど、装備品の質とか能力のゴリ押しが原因……?
露店や出店すらない、静まり返った不気味な街を歩いていく。
「あの壁の向こう……というか街の中心街?に人が多くいるけど、あっちに避難してるとかあるのかな……」
(海側除いて)街を囲う一際高い壁を見ながら零す。
「東側の住民があの中に逃げ込んだとか? 海蛇のいた周りの民家には人居なかったみたいだし」
などと会話しながら壁を見つつ中心街?の西側に来る。
そういえば所々にある看板みたいなのを見ると「カランの街の〜」とか「〜カラン支店」みたいなことが書かれており、無意識に見たことない文字読めるようになってるな。
……と、自分の変化に困惑したりもしているが受け入れてる自分もいる。慣れって怖いな。
――*――*――*――
「ん、ここだね。月下美人」
ユエの言葉とともに2階建ての建物にドアを開けて部屋に入る。
「おや、お客様かい? 例え神すら倒せない邪悪な海蛇が来ようと毎日営業! 宿屋月下美人へようこそ! あたしは美人受付兼料理担当のマッキーっていうんだ、よろしくね!」
受付で何やら計算してた恰幅の良い肝っ玉母ちゃんみたいな垂れ耳犬頭の女性がそう告げた。
「えっと、海蛇みたいなのが飽きて帰ったのか、いなくなったみたいだから、暫くここに泊まろうかなって……」
「そいつはいいね。当たりだよウチは」
にかっと笑うマッキー。そしてまじめな顔で説明を始める。
「ウチは1人1泊素泊まり5000ユルドの前払いで返金は原則不可! 代わりに部屋にはちゃんと鍵も付いてるし、水浴び場の使用も可能で馬とか居るなら世話しておくさね。」
なんかセールストークっぽいの始まったな。
「朝夕食事付けると1泊1万ユルド! 朝と夕方なら何時でも用意してあるし、あたし特製のミートパイに甘味が付いてくる! 食事を別途注文してもいいけど、1回あたり3000ユルドでパンと魚料理とサラダで固定だからそこは注意だね。1月素泊まりなら20万ユルドの所を1割負けて18万ユルドにしとくよ」
あの門番の爺さんのミートパイ云々を信じるか悩ましいな……。
しかしマッキーの話通りなら……1ヶ月が……40日?
「ということは……1週間素泊まりで30000ユルド?」
「それじゃあ1週間が6日計算になっちまってるよ! 1週間は8日だから4万ユルドさね。値引きはナシだよ」
ユエの質問とそれに対する回答で今知りたいことが分かった。
しかし意図的に間違えることで訂正の中から欲しい情報を得るというテクニックを使うとは、ユエ、できるな。
……駆け引きとか苦手だし、そのあたりも任せるとしよう。
それはそれとして1週間の概念が8日で、1月5週間の40日か。
意外と長いな。
と思ってたらアイコンタクトでこちらにもう少し聞いてみるかと来たので小さく頷く。
「1年とかならさらにお得にとかは?」
「さすがに18カ月は想定してないから、月ごとに前払いだね」
1年=18ヶ月=90週間=720日がほぼ確定した瞬間である。
「なら、ひとまず素泊まりの2人分、36万ユルドだ」
懐に手を入れるフリして、銀貨を36枚取り出す。
それを受け取り数えるマッキー。
途中彼女が手持ちの銀貨を取り出して重さを計ってたけど、偽金疑われたのだろうか……?
「……見たことない銀貨だけど確かに銀貨36枚丁度だね。部屋は一緒、ベッド1つで構わないかい?」
「もちろん! 私たち夫婦だし」
ユエの言葉に目を丸くするマッキー。
「美男美女だからカップルさんかと思ってたけどやっぱりかい! 盛るのはいいけど、隣の部屋や廊下に響くから気をつけておくれよ! 2階の奥の角部屋がアンタたちの部屋だよ」
そう言って鍵を渡してくれた。
うーん、実家の近所にいたお見合いの仲人おばさまが下世話ネタに反応してるのを思い出した。
「ん、気をつける」
「そこはスルーで良かったのでは??」
オレのツッコミに女性2人はスルーを決め込み、ユエはオレの手をつかんで部屋へと向かい、マッキーは笑顔で手を振っていた。
――*――*――*――
取り敢えず部屋を確認して、荷物は特に置く必要ないので一端受付に鍵を預ける。
そして部屋の中で街のマップ確認した時に見つけた冒険者ギルドに行くことに。
「いい出会いがあるといいね。私が一番ならハーレムも可。寧ろ作ろう」
……そういえばゲーム内でも条件付きで重婚(多夫多妻?)できたけど、なんかフリーな女の子キャラの何人かにカイトと重婚しない?とかユエが声かけてたな。
それのせいで疎遠になるし、ユエ目当ての男や、オレに積極的に関わろうとした女キャラ(なお後にネカマと大体判明した模様)はユエが露骨に反発してたのも、オレたちが2人ボッチよりのゲームスタイルになった原因だったっけか……?
そんなことを想いながら、冒険者ギルドのドアを開いた――。
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