男として大切なものを失う気がする……!
「えぇ……あの子、どうやら
…………えっ?
「化け猫って……エミリーさんやサーシャさんと同じ『化け猫』ですか……?」
「うん、と言うか他の化け猫なんて無いしね」
あっけらかんとそう言うエミリーさんに、僕は思考が停止して呆然としてしまう。
だって言葉も話してないし人間の姿にもなってないし……ネコだし……。化け猫なんて気配は全然無かったのに……。
「本当ですか? 化け猫だったら、人間の姿になればあんな風に虐められたりなんて……」
「あー……化け猫もね、誰でもすぐに
エミリーさん曰く、化け猫が人間の姿になる『変化』を使えるようになるまでには、かなりの時間を要するらしい。
化け猫は普通のネコとは違い成長速度が人間とほぼ同じぐらいで、僕が助けたあの子猫も、あの姿ですでに5、6年は生きているのだとか。
ネコの姿で喋るのも変化をするのも何かとコツがいるらしく、ここにいるお姉さんたちも今みたいに自由に話したり変化できるようになるまでにかなりの訓練を積んだのだと言う。
「あの子は多分、すぐに捨てられちゃったからそれどころじゃなかったのね……」
「なんでそんな……」
「野生の世界って結構厳しいのよ。何年経っても身体が小さいままなら、『弱い個体』と判断されて捨てられてもおかしくないわ」
「サーシャちゃんってサラブレッドだから野生経験無いよね? やけに詳しいわね」
「……って
「え? 何?」
「何でもないわよっ」
サーシャさんとエミリーさんのやり取りを聞きつつ、僕は子猫の姿を思い出す。
そっか、あの子もひとりぼっちだったのか……なんだか僕みたいだ。
僕がしたことは、あの子の助けになったのかな? 僕がお姉さん達に癒してもらったみたいに、あの子も心が軽くなったかな?
誰にも助けてもらえないなんて、寂しいもんね……
「……僕、あの子猫に会いたいです」
僕がひとりぼっちのあの子の支えになれるのなら、こんなに嬉しいことはない。
「じゃ、そろそろ上がりましょう? ここでずっと話してても逆上せちゃうし、経緯を聞かないとだしね」
「そうしよっか♪︎
「っ~~!?」
子猫に会えたら、『早く気付いてあげられなくてごめん』って謝ろう───そんな風に一人しんみりと心を決めていた僕は、浴槽から上がるときに見えてしまったエミリーさんのエミリーさんが目に焼き付き、二つの意味で硬直してしまうのだった。
♢♢♢♢
なんて決意を新たにしたのもつかの間、お風呂から出た僕は、また新たな壁に直面していた。
「な、な……なんで
「ごめんねぇ、どうしてもこれしかなくて……!」
思わず声を荒げてしまう僕の手には、エミリーさんが着替えとして用意してくれていた服……紛れもない『メイド服』が握られていた。
なんとエミリーさんは、男の僕にこの女性用のメイド服を着せようというのだ!
こんな恥ずかしいことできるわけもないし、絶対似合わないし……第一、もし着たらなんだか男として大切なものを失う気が……
「…………」(チラッ、ドキドキ)
───ハッ!
ダメダメッ、もし着たら男として大事なものを失って…………(チラチラ)
でも実際、僕の服は泥んこのびしょ濡れで、今は洗濯中だから着るものがないのも事実なわけで……いや、別にこのメイド服が気になるわけじゃ……(チラチラチラ)
「でも大丈夫だよ! それルナちゃんのだし、
「何が大丈夫なんですか!?」
これルナさんのなの!?
そんなの……女の子が着てた服を僕が着るなんて、なんかすごくエッチな気がする……!
あっ……意識したらなんかいい匂いがする気が───
「それと……それとね……? ここには女の子しかいないから、当然男の子の下着なんて無いわけで……」
「えっ、あっ───」
「ってことで、ルナちゃんのパンツを拝借してみたけど……
若干頬を染め、おずおずとした様子ながらどこか期待に満ちた目をしているエミリーさんの手には、白と水色の可愛らしいしましまパンツが掲げられている。
『ルナさんのパンツ』と前置きをされれば、当然彼女の姿を想像してしまうわけで……下着姿のルナさんを想像してしまった僕は、きっと湯気が出るほど真っ赤になっていることだろう。
『さすがにそれは……』と口を挟むサーシャさんも、止めに入るわけではないあたり……まぁ、なんだ、
女性用下着を着けた男の娘の姿を───
「まぁ、さすがにルナちゃんの方がサイズは大きいから多少余裕は……」
「お……いや、結構ピッタリになるんじゃないかしら……?」
「……? あぁ、お○ん○んがあるからってこと?」
「っ!?」
「バッ───私がせっかく言葉に濁したのに、ストレートに言うんじゃないわよっ!」
「あはは、別に
こんな綺麗なお姉さんの口からおち○───なんて言葉が出るなんて、なんかこう……しかもお姉さんのパンツまで履かされるとなると───
「
また新たな扉を開いた僕には、エミリーさんの呼び掛けも届かず……僕がまた意識を取り戻すまでには、しばらくの時間を要するのだった。
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