あの子ね、実は……
「んむっ……!?」
「あっ……!」
恥ずかしさのあまり僕が逃げ出そうとしたその時、ちょうど中に入ろうとしていたエミリーさんとぶつかり、僕は浴室へ押し返されてしまう。
それどころか、僕は小学生でエミリーさんはおそらく二十歳前後だ。体格で完全に負けている僕は、その勢いで足を滑らせて後ろへとバランスを崩し───
「危なっ……!」
「っ……!」
「きゃっ……!」
何かに掴まろうと必死に伸ばした手はたまたまエミリーさんの腕を掴んでしまい……僕が引っ張る形でエミリーさんまで倒れ込んでくる始末だ。
結局僕とエミリーさんは、咄嗟に滑り込んだサーシャさんの上に二人して倒れ込むことになったのだった。
「ご、ごめんね
「むぐっ……は、はいっ……」
「痛たたた……ほら、怪我しちゃうところだったじゃない! 気を付けないとダメでしょ!」
「ぁうっ……わ、分かりましたから……!」
エミリーさんは顔を覗き込んで必死に謝ってきて、サーシャさんは口を尖らせて僕を叱る。
二人ともそれぞれ僕を思ってそう言ってくれているのだけど、今の僕はそれどころじゃなくて二人の話が全く入ってこない。
今の状況は……僕は二人と密着しすぎてるからだ……!
エミリーさんが覆い被さる形で倒れてきて、それをサーシャさんが受け止めたことで、僕は仰向けのサーシャさんの身体に背中を預け、そして上からエミリーさんにのし掛かり……つまり、二人にサンドイッチされている。
顔面にも後頭部にも感じるムニムニとした柔らかさは、二人の胸だろうか。背中にもお腹にもサーシャさんとエミリーさんの体温を感じ、少し手を動かそうものならどちらかの肌を撫でてしまう始末だ。
「え、エミリーさん……苦しっ───」
「あっ、ご、ごめんね? 私さっき色々動いてて汗かいちゃったから汗臭いよね……!?」
それも含めてすごく良い匂いです……とは言えるわけもなく。
エミリーさんが身体を起こしたことでようやく解放された僕は、ついさっきまで顔をエミリーさんの谷間に埋めていた事実と……そして彼女の胸の先っぽまでしっかり見てしまったことに居ても立ってもいられなくなり、思わず顔を逸らす。
「ぁんっ……!」
「っ!?」
しかしその動きはサーシャさんの胸に顔を擦り付ける動きとなり、頭の上から聞こえてきた艶かしい声に、僕の
なんか、もう───
「色々と限界です……!」
「……もう一回お湯に入ろっか」
何かに気付いたのか、顔を真っ赤にして目を泳がせるサーシャさんのその言葉に、僕は心から賛成したのだった。
♢♢♢♢
「……♪︎」
「っ~~……」
「…………」
それから少しして、僕とサーシャさん、エミリーさんは、身体を縮めて三人でお風呂に浸かっていた。
サーシャさんは相変わらず僕に世話を焼きたいのか、僕を膝に乗せてぬいぐるみを抱くかのように抱き締めたまま。
エミリーさんはそんな僕とサーシャさんさんと向き合って座っていて、ニッコニコの笑顔だ。
「……狭いんだけど、なんでエミリーまで入ってくるのよ……」
「だって、サーシャちゃんだけだと
「何するかってなによっ……!」
「何って……
「なっ……私が小さい男の子にそんなことするように見えるわけ!?」
「え~、だってサーシャちゃん、
「っ!? そっ……う、だけど……!」
「サーシャさん、『何か』ってなんですか……?」
「それはっ……
「ひぅっ! ご、ごめんなさい……!」
聞いたら怒られるなんて、悪いことなのかな……でもサーシャさんもエミリーさんも知ってるみたいだし、僕も大人になったら分かるのかな……?
「……って言うのは半分冗談なんだけど」
「それ、半分は本気って言ってるようなものよ?」
「……ふふ。それでね?
「僕にですか……?」
エミリーさんに適当に誤魔化されて不機嫌らしいサーシャさんが、ムスッとした表情のまま僕を抱き締める腕に力を入れ、尻尾でペシペシとバスタブを叩いている。
そんな余計に密着した彼女の身体の感触をなんとか意識の外に追いやりつつ、僕はエミリーさんに話の続きを促す。
「えぇ……ひとまずあの子猫ちゃんなんだけど、
「そっか、無事だったんだね……良かった……!」
「でも少し怪我してるみたいだから、この後病院に連れていくけどね……」
「っ……やっぱり、あいつらが……!」
「
「そうなんです……僕のクラスの人だけど、ネコを虐める最低な奴らだ……!」
「……今すぐに聞きたいけど、
「そうだね……お風呂上がったら詳しく聞かせてくれる?」
「うん……! って言っても、途中からしか分からないけど……」
「いいのよ、
「子猫に関して、ですか?」
「えぇ……あの子、どうやら
…………えっ?
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