ネコ……じゃない……!?
「あの、すみませ───えっ……?」
「これって───あっ」
「ヤバッ……!」
入っていったはずのネコはそこには見当たらず、なんと、なぜか猫耳と尻尾とメイド服を着けているすっごく綺麗なお姉さん達が何人も集まって、丸められていた紙を覗き込んでいたのだ……!
全員が、僕を連れてきたお姉さんと
さっきまで居なかったはずなのに……このお姉さん達はいったい何処から───
「あらら、バレちゃったじゃない」
「……ただで帰すわけにはいかなくなった」
「えっ……?」
ふと背後から聞こえてきた声に、僕は慌てて振り返る。が、そこには誰もいない。
いや───
「こっちよ、こっち」
「下見て……?」
「下……えっ!?」
そこにいたのは、さっきまで触れ合っていたメインクーンの子とロシアンブルーの子が座ってこちらを見上げていた。
「ま、言いたいことは分かるわ」
「でも見た通りだから」
「ね、ね、猫が喋ってるぅぅっ!?」
ロシアンブルーの子は『驚くのも仕方がない』といった表情で、メインクーンの子は僕の声が大きかったからか少し顔をしかめた表情で。
ね、猫って喋るんだっけ!?
いやそんなわけ無いよね!?
でも実際喋ってるし……夢……?
じゃなきゃこんなあり得ないこと───
混乱の真っ只中に突き落とされ目をぐるぐるさせる僕の様子を見て、落ち着くまではまだ時間がかかると思ったのだろうか。
この沈黙を破ったのは、ロシアンブルーの子だった。
「じゃあそろそろ自己紹介するわね?」
そう前置きをした直後、ロシアンブルーの子の身体を白い霧のようなものが包み───その場に現れたのは、猫耳と尻尾、そしてメイド服を身に付けた、お人形さんと見紛うほどに綺麗なお姉さんであった。
「私はロシアンブルーの『サーシャ』。一応
青い瞳が美しいキリッとした眼を少しだけ細め、輝く銀の髪をサラリと撫でながら事も無げにそう言うロシアンブルー……改め、サーシャさん。
「化け───えっ?」
「それと……もちろんここにいる全員が化け猫だから、全員こうして人間の姿になれるわよ?」
「えっ───」
僕が困惑の声を漏らすよりも早く、隣に座っていたメインクーンの子も……騒ぎを聞き付けて集まっていた他のネコ達も次々と人間の姿に変化していく。
それを目の当たりにした僕は、本日二度目の絶叫の声を上げるのだった。
♢♢♢♢
「あなた、お名前はなんて言うの……?」
「えっ……えっと、
「そっか……♪︎ ねぇ
「は、はい、その……」
「緊張しなくて大丈夫よ……? みんな優しいネコちゃん達だから……♪︎」
「あ、あの、緊張してるのは知らない人に囲まれてるからとかじゃなくて……」
「じゃあどうして……?」
「リ、リリィさんが僕を抱き締めてるから……ですっ」
さっきから僕に色々と話しかけてくるのは、メインクーンの『リリィ』さん。ブラウンの髪を短く切り揃え、無表情な感じと少し低めの声が心地よい。
が、身長は多分180cmぐらいはありそうなほど大きく、そんな身体で僕を膝の上に乗せ、後ろから抱き締めながら話しかけてくるのだ。
そんなの緊張しない方が無理だし、その……む、胸も……僕の両肩にずっしりとのし掛かるそれは、多分僕の頭より大きいかも……。
だから僕は真っ直ぐ前だけを見て、左右を見ないようにしてひたすらに答える。
「
「っ~~……あ、あのっ! 全員化け猫ってことは、僕を連れてきたお姉さんや受け付けにいたお姉さんも……」
「もっちろん! 私は黒猫の『
「私はアメリカンショートヘアの『エミリー』よ。今日は私と
そう言って笑顔で手を振るのは、僕をここまで連れてきた
そんなお姉さん2人は僕の正面からにこやかに目を合わせてくるから、ついには正面にも目のやり場がなくなってしまった。
「他の子も紹介しておくね? ラグドールの『サフィア』とベンガルの『クロエ』と……」
リリィさんに抱き締められたまま、僕はじっと時間が過ぎるのを待つことにしたのだった。
「それじゃあ
「本題……ですか?」
「うん」
全員の紹介が終わり、(まだリリィさんは離してくれないけど……)僕も少しだけ落ち着いてきた頃、そう切り出したのは
その手には、例の紙が握られている。
それを見た瞬間、僕の表情と心がグニャリと歪むのが分かった。
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