ウメボシ2

夢月みつき

「ウメボシ2」

 ある月夜の晩に一人の女性が住宅街を歩いていた。

 薄暗い道に少し不安に思いながら道の角を曲がろうとした……


 その時、月明りの下、巨大な赤い物体が現れた。

 シワシワの体、果肉たっぷりの肉厚の、生唾なまつばが出て来そうな酸っぱい匂い。


 それに手と足とつぶらな瞳が付いていた。


「ウメぇえええええええ!!!」


「キャアアアア!!」


 女性はウメボシに追いかけられて、全速力で逃げ出した。

「ウメえ――!!」


 ウメボシはなおも執拗に追いかけて来る。

「ギャー!」



 女性はけつまずいて、ハイヒールのかかとがボキリと折れた。

 ドサリと地面に倒れた女性に、見下ろし、ニヤリと笑うウメボシ、フルフルと震えて怯える女性。



 ウメボシは自分の果肉をむしり、女性に食わせようとした。

 もうダメだ! 一週間、スッパイ顔が戻らなくなる!




 そう覚悟を決めた時、月光に照らされて、まるでヒーローのように、突如、謎のじいさまとばあさまが現れた。


 その両手には、白米が山盛りに盛られたご飯茶碗と箸が握られていた。


「美味そうな、ウメボシじゃ~」


「高級ウメボシ様じゃ~」


 じいさまとばあさまはヨダレを垂らしながら、ウメボシに近づく。

 危険を察知した、ウメボシは冷や汗を流し、全速力で反対側に逃げ出した。



「ウメ――!!!」


「むわぁあてぇえええええ!!」


「待て待てぇええええ!!高級ウメボシ――!!食わせろ!」


 目を血走らせたじいさまとばあさまに馬乗りになられたウメボシは、果肉をむしられた。


「ウメ―!!」



 住宅街にウメボシの叫び声とじいさまとばあさまの雄叫びが響き渡った。


「かぁあっ、美味うまぁあああぃいいいッ!!!」


 世のウメボシの皆さん、月夜の晩に現れる、じいさまとばあさまには気をつけて……ください。



 おわり



 最後までお読みいただきありがとうございました。

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 前回の話はこちら

「ウメボシ」

 https://kakuyomu.jp/works/16818792435768848233



 コメディ短編集はこちら

「夢の月コメディ劇場短編集」

 https://kakuyomu.jp/works/16818093085174942474

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