戦場の狂戦士~転生者はレベルと無限蘇生チートで最強に昇りつめる~
まんじ
第1話 青い空
地面に大の字で寝転び、真っすぐ眺めるそらは青かった。
それだけを見ていれば平和そのもの。
だが周囲から聞こえてくる喧騒と、血や糞尿交じりの臓腑の鼻をつく臭いがここが戦場である事を、いやでも俺に思い出させた。
「また死んじまったか」
手にした槍の柄を地面につく形で起き上がる。周囲では、敵味方入り混じる形で殺し合いが繰り広げられていた。
「大混戦はこれだから……」
油断していた訳じゃないが、前も後ろも、どこから敵が攻撃してくるか分からない状態では、流石に不意打ちを避けるのは難しい。そして不意の背後からの一撃で、大の字で寝転ぶ羽目になった訳だ。
「ああああああ!!」
ボヤいていると、槍を構えた敵兵が立ち上がった俺に突っ込んで来た。俺はそれを手にした盾で強く弾き、その腹部に槍を突き込む。
「が……げふぅ……」
その一撃で、敵兵は血を吐き崩れ落ちた。
「一対一なら、下級兵士相手だともう負ける心配はほとんどないな」
下級兵士は、下級市民や奴隷階級の人間が強制徴収によって急ごしらえで用意された兵士の事を指す。本格的な訓練を受けていない上級兵士などに比べ、明らかに身体能力や練度で劣る彼らは、ハッキリ言って戦場における消耗品でしかない。
因みに、俺は下級市民だ。スラム生まれの、孤児院育ちだからな。なので、俺自身も下級兵士って事になる。
「落ち着き払った一撃!貴様なかなか肝が据わっておるな!」
大柄な、大剣を片手で振るう目立つ重装備の大男。そいつが味方の下級兵士を吹き飛ばす様に切り裂いて、俺の前に躍り出て来る。
巨体の相手だが、近づかれるまで全く気づかなかった。何らかのスキル、もしくはマジックアイムを使ったのだろう。
やれやれ……装備にスキルかマジックアイテム。それにこの体格。間違いなく上級兵士だろうが、なんでこんな所にいやがるのか謎だ。
戦場だから、と言えばそれまでだが。使い捨ての下級兵士と上級兵士とでは、扱いがまるで違う。こんな簡単に混戦になる様な場所に、上級兵士が単独で送り込まれる様な事は普通ないはず。だからこその疑問。
「ワシの名はダルトン!ダルトン・セーバー!貴様の名を聞かせて貰おうか!」
ああ、こいつがそうなのか……
大男が名乗りを上げる。混戦時に目立つことをするのは愚かな行為だが、この男にはそれを些事と流せるだけの力量があった。
なにせ有名人だからな、ダルトン・セイバーは……
限りなく騎士に近い力を持つ、上級兵士の中でも更に上澄み中の上澄みと言われる男だ。そのレベルの人間になると、下級兵士程度が不意を突いたり、大挙した所でどうにかできる訳もない。
こりゃまた死ぬな……
下級兵士ならともかく、並みの上級兵士とて今の俺では相手取るのは厳しいと言わざるえない。それが更に上澄みとくれば、勝ち筋などあろうはずもなかった。まあ死んでも、特に問題はない訳だが……
なにせ俺は不死身だからな。
「俺の名はカイトだ」
一応戦場における礼儀作法なので、名乗り返しておく。孤児なので姓はない。
「カイトか!貴様が我が血を滾らせてくれる事を願うぞ!」
ダルトンが嬉々として、人間サイズもありそうな大剣を振りかぶる。その軽々とした動き。まるで剣に重みなどないかの様だ。もちろんそんな訳はないが、それだけこの男の筋力が並外れている証である。
「来い……」
俺は木で出来た盾を足元に捨て、槍を両手で構えた。木で出来た様な粗末な盾で、奴の大剣を受け止めるのは不可能だ。なら盾は捨て、槍を両手で持って攻撃に注力する。
勝てないのは分かっているし、俺は死なない。とは言え、だ。何もできずに負けるのは腹立たしい。せめて一突き、奴の体に叩き込んでやる。そのためにはカウンターだ。
「うははははは!さあ勝負!!」
ダルトンが豪快に笑いながら、高く掲げた大剣を振り下ろす。いや、振り下ろそうとして――その前に空気が爆発する。
「が……」
その凄まじい熱と衝撃に、真面に声も上げれず体が燃え吹き飛ばされてしまう。これはダルトンの攻撃ではない。魔法だ。おそらく、友軍の魔法使いがダルトンに気づいて放った物だろう。俺はそれに巻き込まれた訳である。
しょせん下級兵士何て使い捨ての駒だからな。なので、巻き込まれる人間がいようともお構いなしだ。
「ち、邪魔が入ったか」
死にかけているせいか、体はピクリとも動かせない。だが、目と耳は辛うじて使える。そんな俺の視界に微かに映るダルトンの姿は、不動だった。それに声を聴く限り、大きなダメージも受けていない様に感じる。
こっちは余波で死にかけてるってのに、化け物だな……
「看破能力が高いソーサラーがいたようだな。カイトよ。剣こそ交えれなかったが、そなたの名は忘れんぞ……むん!」
ダルトンが跳躍するのが見えた。その直後、体が再度吹き飛ばされる。恐らく、彼を狙った二発目の魔法が飛んできて、その余波で吹き飛ばされたのだと思う。
そこで俺の意識は途切れ――
そして蘇生する。
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