古代魔法の惑星

スター☆にゅう・いっち

第1話

 宇宙開拓団の探査船が、とある惑星に降り立った。

 地表は緑に覆われ、空気も澄み、水も豊か。人類の植民地として、これ以上ないほど理想的に見えた。


 だが、調査班はそこで奇妙なものを発見する。

 大地にそびえる巨大な石柱。表面には古代文字が刻まれ、燃料も電線も見当たらないのに、石はかすかに光を放っていた。


「これは……魔法の柱か?」

 科学者の一人が冗談めかして笑った。

「それにしても腹が減ったな。休憩しようぜ」


 その瞬間、石柱がかすかに震え、彼の目の前に食糧の山が現れた。


「な、なんだ……?」

「もしかして……願望実現装置か?」


 半信半疑で、別の隊員が口にした。

「兵器を」


 すると、彼の手には銃のようなものが握られていた。


 調査を重ねた結果、この惑星全体を覆う仕組みは、言葉や願いを形に変える「古代魔法」のシステムであるらしいと判明した。

 それは機械でもエネルギーでもなく、人の意思そのものに反応して現実を変えるものだった。


「これなら、苦労せずに都市を築けるぞ!」

 開拓団は歓喜した。


 人々は次々に願いを口にした。

 家が建ち、道路が走り、果樹園が広がっていく。


 しかし、やがて問題が生じた。

 一人が「もっと立派な家を」と願えば、隣家は小さく縮んだ。

 別の者が「敵が来るかもしれない」と恐れれば、空に不気味な艦影が浮かび上がった。


 望みは重なり、打ち消し合い、街は混乱に包まれた。

 飢えを恐れる者は食糧を無限に増やし、大地を荒れさせた。

 恐怖に駆られた者は怪物を生み出し、その怪物が人々を襲った。


 やがて最後に残った者が、ひとり呟く。


「……こんなことなら、何も望まなければよかった」


 その瞬間、すべては消えた。

 都市も兵器も怪物も。

 ただ静かな森と、光を放つ石柱だけが残された。


 ――数千年後。


 別の開拓団が、この星に降り立つ。

 石柱を調べた彼らは、首をかしげた。


「確かに古代文明の痕跡はある。だが、人類の記録には何も残っていない……」


 やがて一人が冗談めかして言った。

「これは……魔法、じゃないか」


 石柱は、静かに光った。

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古代魔法の惑星 スター☆にゅう・いっち @star_new_icchi

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