聖騎士団のカマセ君
タヌキング
やっぱりな
私の名はククール。女だてらに聖騎士団の団長をやらせてもらっている。今日は王からの勅命で、王国近辺の森にオークの亜種が出て人々を襲っているので、討伐して欲しいと言われ、騎士団の中でも選りすぐりメンバーを選出して20人のパーティでオーク討伐に向かっている……筈だったのだが現在19人しか居ない。
私は馬を走らせながら、隣にいる副団長に確認した。
「おい、カマセの奴は本当に一人で宿舎を出て行ったのか?」
「はい、アイツ早くに飛び出して行ったらしく、新人たち数人がそれを目撃しています」
「はぁ……あのバカ」
功を焦って自滅する典型的な例である。おそらくだがオークと聞いて自分でもやれると思ったのだろうが、ただのオークでは無い、舐めると痛い目に遭うことになる。それなのにあのバカときたら。
「馬を急がせるぞ」
「了解しました‼全軍速度を上げるぞ‼」
あんなバカでも私の部下である。どうか無事であって欲しい。
俺の名前はカマセ。聖騎士団の期待の新人である。今日のオーク討伐は俺一人でやって手柄を独り占めしてやる♪そう思ったので朝に早起きして一人馬を走らせた。オーク如き俺様一人で充分だぜ♪
森に着くといつもと雰囲気が違う、全体的に血生臭い感じがしたのである。獣たちの死骸がよく見られるし、心なしか雰囲気もどんよりと暗かった。俺は馬を置いて一人森の中に入って行った。オークの亜種一匹を一人で探すのは骨が折れそうだが、動物たちの死骸を目印に進んでみると、泉の近くでやたらデカい赤いオークを発見した。これがオークの亜種か、コイツを倒せばククール隊長も俺のことを褒めてくれるはずだ♪よしやったるぜ‼
「おいオーク‼このカマセ様が相手になってやる‼」
俺がそう言いながらオークの前に飛び出すと、オークはデカい体を俺の方に向けた。
「ニンゲンカ、ヒトリでドウスルツモリダ?」
「あん?テメーなんか一人で充分なんだよ」
俺が剣を抜いて右手で構えた。オークなんて何百回と倒してきてるんだ。瞬殺してやるぜ。オークもやる気になったのか大きな斧を構えた。早くこんなデカブツ倒してククール隊長に頭をなでなでしてもらいたい♪もしかしたら耳かきもしてもらえるかも♪えへへ♪
一瞬そんなことを考えていると、いつの間にかオークが手に持っていた大斧が消えていた。あんな大きな物をどこにやったのだろうか?そう考えた次の瞬間、今度は俺の剣を構えていた右手が血しぶきをあげながら飛んでいた。
「えっ?」
俺は最初は理解出来なかったのだが、猛烈な痛みでその場に膝を突いて絶叫した。
「ぎゃああああああああああああああああ‼」
俺の右手が……俺の右手が。痛い痛い痛い、なんでどうして?この俺様が何でこんな目に。
そんな俺を嘲笑しながらレッドオークはこんなことを言った。
「ニンゲン、ヨソミゲンキンダ」
ブルブルと震えながら、俺の頭の中が死という文字でいっぱいになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます