第2話
「井上、この人は今日から君のクラスに転校してくる生徒だ」
校長先生の言葉に、思わず瞬きをする。
「……え?」
再度さっきの美少女に視線を戻すと、彼女はソファから立ち上がり
「白神良と申します。本日よりこの学校に1年間お世話になります」
彼女は落ち着いた声で、きちんと頭を下げた。基本は敬語口調――けれど、妙に引っかかる眼差しがあった。
その白神が、僕の方へ一歩近づき、口を開いた。
「井上さん。私、あなたに一つ、お願いがあるんです」
「……頼み事?」
なんだろうか。少し、嫌な予感がした
「どうか一年間、私の傍にいてくださいませんか?」
一瞬、頭が真っ白になった。
彼女の可愛さに了承しようとした時、なぜか陽葵の顔が浮かんだ。
「……悪いけど」僕は思わず言葉を選び、普段よりも丁寧な調子で答えた
「僕は受験生だし、一年中ずっと一緒ってのは……無理かな」そんな最もらしい理由を付けて断った。
だが、校長先生が僕に視線を向けて、静かに言う。
「井上、私からもお願いする。出来る限りこちらも援助するから」
ああ、めんどくさい。最高にめんどくさい…!
とりあえず一刻も早くこの場から逃げたくて僕は
「とりあえず、校内を案内するくらいならいいですよ。」
そして校内を回ることになった僕は彼女に足早に校内を案内する。家庭科室、音楽室、理科室、多目的室……。案内しながらも、白神はずっと僕の隣を歩き、時折こちらを見上げて微笑んでくる。その距離の近さに、落ち着かない。
「最後は……保健室かな」
扉を開けると、中は静まり返っていて、養護教諭の姿もない。
「井上さん……こっちへ来てください」
白神に呼ばれ、ベッドのそばへ足を運ぶ。
次の瞬間。
「……っ!」
突然、強い力で肩を押され、僕はベッドに倒れ込んだ。視界の端に白神の長い髪が揺れ、気がつけば彼女が覆いかぶさるようにして僕を見下ろしていた。
「……あなたには、どうしても傍にいてもらわなきゃならないんです!」
近すぎる距離。鼓動がやけにうるさい。
なにを考えているんだ、こいつは…!
僕は心の中でそう叫んで、この状況をどうしようかと考え始めるのだった
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