第43話 巨体のデメア
――ドンッ!
ゴーレム型のデメアの拳が地面に叩きつけられ、砂埃が舞う。同時に地面が揺れて、優依さんが舌打ちした。
「さっきの地鳴りはこれか」
「たくさんのデメアが出現した影響かと思ったけど、違ったようだ」
「地震があったんですか?」
夢月が尋ねると、二人はほぼ同時に「うん」と頷く。
「ただの自然現象ではないと思っていたけれど、ね」
「あいつらは挨拶だとか言ってたが、手振ってさよならってわけにはいかねぇよな」
真顔で冗談を言う優依さんの手には、彼の身長と同じくらいの大きさのハンマーが握られていた。……いつの間に。
「よっと」
「ゆ、優依さん……?」
「ん?」
片手でひょいっとハンマーを操る優依さんの筋力に
わたしの表情から察したのか、慧依さんが苦笑いを浮かべて囁いてくれる。
「あれは、持つ者にとってはそれほど重くないんだ。ただ、振り下ろした時のパワーは通常なんだけどね」
「成程……」
「あ? でかいもんには力技でいくべきだろ」
優依さんはそう言うと、丁度真上から落ちて来たデメアの拳に向かってハンマーを叩き付ける。ドンッという重い音がして、黒い欠片がボロボロと落ちて来た。
「何、これ」
「デメアの欠片、だな。優依さんのハンマーで、ゴーレムの手が壊れたんだ」
「これで終わりってならよかったんだけどなぁ?」
優依さんが、ひょいっとハンマーを担ぎ直す。そしてわたしは、別の方向から飛んで来た拳を躱すために横に飛んだ。
ドゴッという音と共に、地面に同心円状のひびが入る。その上に落ちた拳を見て、わたしは背筋が寒くなった。
「これ、デメアの……」
「――ッ! 幾つあるんだよ!?」
「さあ? 幾つだろうね?」
夢月の叫びも最もだ。デメアの巨体は一つ、腕は二本だったはず。それにもかかわらず、現状飛んで来た拳の数は三つ。
(一本は優依さんが潰したはず……)
そう思って振り返り、わたしは知った。デメアの腕は確かに二本だけれど、それは手首から下を自らの意思で切り離して攻撃に使っていることを。
「あ、あんなの、何回腕もいだって変わらないじゃないですか!」
「お、気付いたか美星ちゃん。その通りだ」
「優依さん!?」
わたしの横をすり抜けた優依さんが、ハンマーを振りかぶる。彼の目の前には、デメアから発射された拳が迫っていた。
「はぁぁぁっ!」
ブンッと振られたハンマーとデメアの拳がぶつかる。
拳は一度目のようには壊れず、ターボでもついているのかぐいぐいとハンマーを押していた。当然優依さんも負けじと押し返そうとして、刃を食いしばる。
「――優依さん!」
「お前は自分のことも心配しろ、ばか!」
「わっ」
ぐいっと腕を引かれ、体のバランスを崩す。そのまま腕を引いた誰かの胸に飛び込んでしまった。
その勢いのまま何かにぶつかれば、頭上から「いってぇ」と聞き馴染みのある声がする。ハッとして顔を上げれば、夢月が後頭部をさすっていた。彼の後ろには、街路樹。どうやら、背中を木の幹に打ち付けたみたいだ。
「ご、ごめん夢月! 大丈夫? 怪我してない!?」
「だ、大丈夫大丈夫。ってか、お前の方だろ。振り返ってみろ」
「え……」
言われた通り振り返ると、丁度慧依さんが「ハッ」という掛け声と共にデメアの足を真っ二つに斬ったところだった。
優依さんは巨大ハンマー、慧依さんは細身の剣だ。
「え……」
「美星ちゃん、危なかったね。あのままだったら、これに踏み潰されていたよ」
これ、と慧依さんが指し示したモノは、斬られて力を失くし消えてしまう。どうやらデメアは、拳だけでなく足も飛ばすことが出来るらしい。本体を見れば、両足が生えている。再生も早い。
「ありがと、夢月。助けてくれて」
「……死なれたら困る。ほら、倒すぞ」
「……うん!」
呼吸を整えて、再び飛んで来た拳を躱す。それから射手座の力を借りて、デメアの本体に矢を飛ばした。
「あっ」
だけど、ゴーレムの体には傷をつけることが出来ない。生き物のデメアには有効だったけれど、体が硬いものは苦手だったらしい。
わたしの判断ミスを見て、明神夜斗がクスクスと嗤う。
「ざーんねんっ。あんたみたいな戦闘初心者なんかに貫けるほど、ゴーレムの体はやわじゃないよ」
「――っ。だったら……『蟹座の怪力』!」
小手先で駄目だと言うのなら、力づくで止めてみせる。わたしの声に応えてくれた蟹座の蟹は、デメアと向こうを張れるくらい大きい。
巨大なはさみを振り上げ、デメアに向かって叩き付ける。バキッと音がして、デメアの防御のため上げていた左腕が砕けた。
「よしっ」
「お、やるなぁ美星ちゃん」
オレも負けてられないな。そう笑って、優依さんがハンマーを持ったまま跳躍する。
彼の向かった先は、砕けたデメアの左腕。再生しようとするその腕を、再生し切る前に叩き折った。
「なっ!」
「簡単には進ませねぇからな」
「優依さん! ……あれ? そういえば夢月と慧依さんは……」
いつの間にか、夢月と慧依さんの姿がない。きょろきょろと見回すわたしの頭を掴んで、優依さんがデメアの方を向かせた。
「今は、こっちに集中しろ。……大丈夫。夢月も慧依も、風谷を追って行った」
「……風谷を?」
気付かないうちに、風谷・G・フリーグの姿もない。全く気付かなかった自分に呆れたけれど、今は優依さんと一緒に目の前のゴーレムのデメアを倒さなくては。
深呼吸して、わたしはデメアの肩に腰掛ける明神夜斗を見据えた。
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